インドネシア経済は足元、極めて緩やかな成長を続けている。昨年は、底堅い個人消費に支えられ、通年で3．7％と2001年（3．3％）をやや上回る経済成長率を達成した。しかし、この経済成長率はアジア通貨危機前の半分程度にすぎない。
経済成長率低迷の大きな原因となっているのは、投資の不振である。インドネシアの投資は、2002年第1四半期に底を打ち回復に向かっているが、足元の投資率（投資／GDP）はアジア通貨危機前に比べて大きく低下しており、投資の伸び率自体も低い。
投資が不振に陥っている原因は、投資環境悪化（労働争議多発、汚職の蔓延等）のため海外からの直接投資が減少していること、および、アジア通貨危機の際に発生した不良債権の処理の本格化により企業のリストラ圧力が高まっていることである。
投資を回復させる即効薬はない。政治の安定と経済構造の改革で海外投資家の信認を高め、海外からの直接投資を増やすのが王道であるが、かなりの時間が必要である。
インドネシアの景気回復を下支えしてきた個人消費は、高インフレ率の下での実質金利低下を背景に、借入れをしてでも消費するのが有利だと考える消費者行動（いわゆるインフレ・ヘッジング消費）によって押し上げられていた側面がある。しかし、インフレ率が低下してきて実質金利は上昇しつつあり、インフレ・ヘッジング消費の動きは弱まっていくものと見られる。また、外資系企業の撤退や、最低賃金の伸び率の大幅低下などから、雇用・所得環境が悪化しつつある。このため、個人消費は、今後、減速に向かうと予想される。
国際機関や日米欧諸国のメガワティ政権支援体制は強固であることから、ルピアに対する信認は回復している。原油高による貿易黒字拡大や、政府保有株式の外資への売却にともなう外貨準備増加もあって、ルピア相場は、2002年以降、強含みで安定が続いている。
輸出向けの生産拠点として中国の優位性が高まっていることから、インドネシアへの外国投資は、国内需要向けが中心となり、輸出向け投資はあまり増えない可能性がある。その場合、投資低迷が長期化し、経済成長率も3～4％台の低水準にとどまって、失業率が上昇し、社会不安が高まるといったリスクが考えられる。

インドネシア経済：低迷の構図と今後の展望

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