世界の金融資本市場を大きな混乱に陥れたロシア通貨危機（1998年8月）から5年が経過した。ロシアの証券市場・実体経済ともに通貨危機後の落ち込みから回復を遂げ、経済成長率は1999年から2002年まで4年連続でプラスとなり、足元の景気も好調に推移している。ロシア経済の回復には、原油価格高騰などの外部要因が大きく影響している。
ロシアの株式市場・債券市場が通貨危機のショックから回復した背景には、原油価格高騰によりロシアの石油会社の株が買われたこと、2001年の米国での相次ぐ利下げによって運用難に陥った投資資金が、高利回りに惹かれてロシアを含む新興市場国の債券に向かったことなどがあげられる。
ロシアの実体経済の好調さも、原油価格高騰に支えられている部分が大きい。ロシアの経常収支は原油高によって大幅黒字となり、政府財政も原油輸出税の増収等が寄与して黒字に転じた。しかし、他方で、原油価格高騰は、貿易黒字拡大によりルーブル為替相場を上昇させ国際競争力を低下させるというマイナス効果も生んでいる。
GDP最終需要項目のなかでロシアの景気回復を支えているのは個人消費である。プーチン政権下での政治・社会情勢安定と市場経済浸透を背景に、雇用・所得環境が好転し個人消費が高い伸びを続けており、特に、大都市を中心に消費ブームが沸き起こっている。
個人消費に比べて、投資（固定資本形成）はやや伸び悩んでいる。外国からロシアへの直接投資もロシアの経済規模から見て非常に低い水準にとどまっている。投資拡大に勢いがないのは、ロシアの投資環境の不備に起因していると考えられる。投資環境改善のための試金石となるのがWTO加盟交渉のゆくえであるが、今年中の加盟は難しい状況である。
プーチン大統領は、今年5月の議会演説で2010年までにロシアのGDPを2000年の2倍にすると宣言し経済成長率を高める方針を明らかにした。しかし、ロシアの経済構造は相変わらず原油依存型であるため、原油価格が下落した場合には経済成長率が低下する可能性が高い。ロシア経済が原油市況頼みから脱却し高成長を持続するためには、『来年3月の選挙でプーチン大統領が再選され、経済成長率を高めるためにさまざまな改革が実施される』というシナリオが実現する必要があろう。

ロシア経済の好調は続くか？

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