○緊急輸入制限措置（セーフガード）の発動で、8月より輸入生鮮・冷蔵（チルド）牛肉の関税が38.5％から50.0％に引き上げられた。関税率の引き上げは、仕入価格の上昇を通じて、消費者や外食産業などに大きな影響を与える可能性がある。本稿では、セーフガード発動による牛肉価格の上昇や、それに伴う消費者、流通産業、外食産業の負担について考察した。

○2003年4－6月期のチルド牛肉輸入量は、前年同期比＋33.9％であったためセーフガードが発動された。これにより輸入チルド牛肉の単価は、100グラム当たり79.4円（7月値、関税課税後）から86.0円と、8.3％（6.6円／100グラム）上昇する見込みである。

○セーフガード発動により中小小売店などで牛肉価格の引き上げや特売セールの回数を減らすことが予想されるが、大手小売店では、輸入牛肉単価の上昇を小売価格に転嫁しない方針である。これを前提に試算すると、消費者が購入する牛肉単価は、0.60％（1.6円／100グラム）上昇するに留まる見込みである。また回復傾向にあった家計の牛肉消費量は、牛肉の購入単価の上昇により、一人当たり4.8グラム／年、家計全体で606トン／年減少する見込みである。

○また、セーフガード発動による関税負担増加額は101.1億円となり、これを家計が20.7億円、流通産業が36.6億円、外食産業が43.8億円それぞれ負担すると見込まれる。家計の輸入牛肉消費額や外食産業の市場規模に比べれば、セーフガード発動の影響は比較的軽微といえるが、セーフガード発動の影響については、焼肉店などミクロの視点でも注意する必要がある。

牛肉セーフガード発動による民間負担について

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