○今年は93年以来の冷夏であり、国内の米の生産量は前年比－11.5％の787万トン程度と93年並みの水準まで落ち込むと試算される。しかし、93年当時と比べると、今年は米の在庫量が高水準である一方、需要量は減少しているため、米が全体として供給不足に陥ることはない。このため、93～94年のような米の緊急輸入が必要になることはないであろう。

○コシヒカリやあきたこまちといった有力銘柄米の卸売価格はすでに4～5月に冷夏の思惑で一旦上昇した後、8月に入って急上昇しているが、他の銘柄の上昇幅は小さい。また、小売価格をみるとコシヒカリなどはすでに上昇しているが、他の銘柄の価格は低下している。仮にコシヒカリの価格が93年当時と同じように上昇し、コシヒカリ以外の米価格が横這いで推移したとすると、2003年の米類全体のＣＰＩは前年比＋0.2％、2004年は同＋5.5％上昇することになる。これによって、ＣＰＩ全体は、2003年が＋0.002％、2004年が＋0.056％押し上げられることになる。93年当時の米価格上昇率と比べると、今回予想される価格上昇は限定的なものといえる。

○93年当時の一人あたり米購入量は、米の緊急輸入決定をきっかけに一時的に増加したものの、その後は生産量の減少による供給制約から減少に転じている。94年後半になると、米価格は低下したが、消費者の米需要量は価格上昇前の水準までは回復していない。消費者は米の供給制約が長期化するとみて、食生活を変化させたため、米の需要曲線が下方シフトしたと考えられる。また、米の消費量の減少に合わせて、わかめ、みそ、緑茶といった和食関連品の購入量が減少する一方、米の代替食品と考えられる食パンの購入量が増加した。

○今回の場合は、価格上昇は有力銘柄米に限定されるため、需要シフトが生じるとすると有力銘柄米の消費者が中心になると考えられる。ただ、そうした有力銘柄米を購入している人は米食へのこだわりが強そうである。米全体では供給が足りていることを考えると、今回は有力銘柄から他の銘柄への需要シフトが起こりそうであり、米からパンへのシフトは93～94年の時ほどには起こらないものと考えられる。

冷夏が米の価格と消費に与える影響について

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