○円相場が急速に上昇している。9月24日の東京外国為替市場では、円相場は112円台前半で推移している。これは、9月20日のG7(先進7カ国財務相･中央銀行総裁会議)で日本の円売りドル買い介入がけん制されたことをきっかけとしているが、この背景には、米国の経常収支の赤字が過去最大を記録するなど、資本の米国一極集中が限界に近づいていることがあるとみられる。米国では来年大統領選挙を控えているため、ドル安は当面容認されるとも考えられ、今後、円高ドル安が一段と進行する可能性がある。

○円高ドル安の進行は日本経済にとって短期的にマイナスになるだけでなく、米国経済にとっても副作用をもたらす。米国経済は90年代後半以降、ドル高政策により、海外から大量のマネーを流入させることで投資超過を続けてきた。特に、米国経済の拡大は、これまで日本や中国の巨額のマネー流入により支えられてきた面が大きい。足元では、通貨当局によるドル買い介入などを背景に、日本の対米証券投資は貿易黒字額の6.4倍以上の規模にまで膨らんでいる。

○ドル安によって経常収支の赤字額が縮小することは、マクロ的には米国の投資超過額を減少させることを意味しており、結果的に米国の総需要を減少させる可能性がある。試算によると、円高ドル安が進行した場合には、日本からの対米証券投資額の減少を誘発することで米国の経済成長率は下押しされる。仮に、円ドル相場が1ドル=110円で推移した場合には、米国経済は0.17%程度下押しされる。また、円ドル相場が1ドル=100円で推移した場合には、米国経済は0.36%程度下押しされる。こうした米国経済の減速を受けて日本経済はマイナスの影響を受ける可能性が高い。

○対中貿易赤字額が過去最高になるなかで、人民元を切り上げるべきだとの見方がある。しかし、人民元を切り上げた場合の経常収支赤字の縮小効果は小さい。米国の経常収支の赤字を調整する観点からは、人民元の切り上げだけでは不十分で、円の切り上げも課題となる可能性が高い。

ドル安進行がもたらす米国経済の変調

お問い合わせはこちら

テーマ・タグから見つける

テーマ

タグ