○ユーロ圏の景気は2003年7-9月期以降、外需主導で回復している。しかし、昨年9月初旬からドル/ユーロの為替相場が上昇し、今年1月には一時1ユーロ＝1.29ドル近くまでユーロ相場は上昇した。ユーロ相場の急激な上昇は、回復の緒に就いたユーロ圏経済を再び停滞させかねない。

○ユーロ圏全体とその中のドイツ、フランス、イタリア、スペインといった主要国は、輸出依存度が日本や米国より高い。ユーロ高による輸出減少が経済に与える影響は大きいと考えられる。

○ユーロ圏及びその中の主要国に関して、輸出数量関数と輸出価格関数を推計し、ユーロ相場の変動がどのような影響を与えるか、試算した。その結果、2003年の平均ユーロ相場である1ユーロ＝1.132ドルに対して、2004年の平均ユーロ相場が1ユーロ＝1.25ドル（10.4％上昇）になれば、2004年のユーロ圏の実質ＧＤＰ成長率は0.3％ポイント押し下げられる。また、2004年の平均ユーロ相場が1ユーロ＝1.30ドル（14.8％上昇）になれば、ユーロ圏の実質ＧＤＰ成長率は0.4％ポイント押し下げられるということがわかった。

○他方で、世界経済が加速すれば、ユーロ高の影響は相殺される。2004年の世界実質ＧＤＰが2003年の成長率より0.5％ポイント、また、1.0％ポイント上昇した場合に、2004年のユーロ圏実質ＧＤＰがどの程度押し上げられるか試算した。その結果は、世界実質ＧＤＰ成長率が0.5％ポイント上昇した場合には0.3％ポイント、1.0％ポイント上昇した場合には0.7％ポイント、ユーロ圏の実質ＧＤＰが押し上げられるというものであった。

○2004年の世界実質ＧＤＰ成長率が前年と同じ程度、もしくは、それ以下であれば、今のユーロ高がユーロ圏の実質ＧＤＰ成長率を押し下げることになる。しかし、2004年のユーロ相場が2003年よりも10％程度高くなったとしても、2004年の世界実質ＧＤＰ成長率が2003年を0.5％ポイント上回ればユーロ高の影響を相殺できる。また、15％程度のユーロ高の影響も2004年の世界実質ＧＤＰが2003年の成長率を1.0％ポイント上回れば十分に相殺できる。とはいうものの、やはり、急激なユーロ相場の上昇は回避されるべきであり、ユーロ相場の安定が求められる。

○ユーロ圏の企業は輸出決済に占めるユーロ建比率を高めている。ミクロベースでは、ユーロ建決済比率を上昇させ、為替リスクを回避する必要があろう。

ユーロ圏の貿易構造とユーロ高

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