○2月7日に米フロリダで開かれたG7（7カ国財務相・中央銀行総裁会議）を機にドル安に歯止めがかかるとの見方がある。しかし、ドル相場の下落には米国の貯蓄と投資の不均衡（貯蓄投資バランスの悪化）が大きく影響しており、今後も財政赤字の拡大が見込まれるなかでドル相場の下落傾向が続く可能性が高い。

○米国の財政は大型減税や国防支出の拡大などを背景に、急速に悪化している。2月初めにブッシュ大統領が発表した予算教書によると、2004年度の米国の財政赤字は前年から約1,500億ドル増加し、5,210億ドルに拡大する。ブッシュ大統領は今後5年で財政赤字を半減させるとしているが、イラク・アフガンでの米軍駐留の長期化による補正予算（500億ドル程度の追加的支出）の編成やメディケア費用の拡大などの可能性を踏まえると、米国の財政赤字の急速な改善は困難とみられ、赤字基調が続く可能性が高い。

○米国では財政赤字の拡大に伴い、近年、貯蓄投資バランスが大幅に悪化している。米国の国内貯蓄は財政赤字の拡大を主因に、2003年は3年連続で前年水準を割り込んだとみられる。国内貯蓄が前年水準を3年連続で割り込むのは1932年以来のことである。足元の貯蓄不足（貯蓄と投資のギャップ）はＧＤＰ比5.1％に拡大している。

○過去の推移をみると、貯蓄投資バランスが悪化する局面ではドル相場は下落している。試算によると、米国の財政赤字が1,000億ドル拡大（＝米国の国内貯蓄が1,000億ドル不足）すると、ドル相場を１年間で5.8％、2年間で10.5％下落させる効果をもたらすと試算される。また貯蓄投資バランスの悪化がもたらすドル相場の下落圧力は近年高まる傾向にある。大統領選挙の再選に向けて貯蓄不足への対処よりも景気刺激を優先にするブッシュ政権のもとで、米国の財政赤字の拡大に伴う貯蓄投資の不均衡からドル安が長期化する恐れがある。

○日本は、欧州諸国とは異なり米国債投資を急速に拡大させ、保有シェアを高めているが、ドル安が長期化すれば為替評価損が拡大し、国益を損ねる恐れがある。米国の財政赤字拡大がドル急落につながるリスクであることを認識すると同時に、世界的不均衡を是正するための政策対応を急ぐ必要があろう。

米国財政悪化がもたらすドル急落リスク

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