～その決定要因と今後の展望～

今年5月1日に新しくEU(欧州連合)に加盟した10ヶ国は、既加盟国に比べ発展途上にあり、人件費が安く、労働力が豊富なことから、近年、直接投資の流入が拡大している。中でも、ポーランド、チェコ、スロバキアの3ヶ国に投資が集中している。
これら3ヶ国に直接投資が集中している要因としては、(1)経済構造改革を実行し、マクロ経済の安定化を図ったこと、(2)新規投資に対する法人税の免除措置といった直接投資に対するインセンティブを与えたこと、などがあげられる。
ポーランド、チェコ、スロバキアの3ヶ国向けの直接投資主体をみると、国別では、EUが最大の投資国である。EUの中でも、ドイツ、オランダが積極的に直接投資を行っている。産業別では、製造業向けが最も多いが、近年、規制緩和や民営化が進んだことから、電気･ガス･水道、運輸･通信、金融や小売といった非製造業向けの直接投資も増加している。
新規加盟国向けの直接投資の決定要因について分析したところ、(1)経済水準(一人当りGDP)、(2)労働コスト、(3)国際収支、の3つが直接投資の実行に影響しているという結果が得られた。安いコストを求めるという意味で労働コストは当然であるが、経済水準が重視されるのは、その国を市場として捉え、そこでの販売を企図していることを示している。また、国際収支が影響してくるのは、その国の外貨繰りや為替相場の安定が重視されているためといえよう。
今後、新規加盟国の経済成長に伴う所得の成長が期待できることから、非製造業向けの直接投資のウェイトが高まっていくものとみられる。安価な労働力を求めて、2007年にEU加盟が予定されているブルガリアやルーマニアに直接投資を行う企業も出てきている。しかし、新規加盟国では、EU加盟により、加盟国間の様々な手続きが簡略化されるなどのメリットが既に現実のものとなっており、少なくとも、EU既加盟国の企業、並びにEU既加盟国に進出済みの企業にとっての生産基地としての魅力は、当面維持されると考えられる。

拡大するＥＵ新規加盟国向け直接投資

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