～過熱抑制で資本財供給国に打撃～

中国の2004年1-3月期の実質ＧＤＰ成長率は前年同期比9.8％と高成長が続いている。成長の牽引役は前年同期比43％増を記録した投資だが、ＧＤＰ成長率をはるかに上回る拡大は明らかに過熱であり、中国政府も安定的な経済成長に対するリスク要因として2003年央以降、その抑制に本格的に取り組んでいる。
中国では元々、以下の要因から2000年以降、投資ブームが発生した。
1. ＷＴＯ加盟に伴う市場開放・規制緩和への期待とこれを背景とした直接投資の流入拡大。
2. 2008年北京五輪、2010年上海万博と続く国際イベントの開催準備に伴う需要拡大期待。
3. 経済発展に伴う国内需要の高度化（住宅、自動車、ＩＴブーム）と拡大。
4. 産業の高度化に伴う鉄鋼等の生産財や生産インフラ需要の急拡大。
5. 90年代末の三大改革がもたらしたデフレ圧力の緩和と改革のリストラ効果の顕在化。
さらに、賃金上昇率加速の一方で資本財価格が安定的に推移したことから資本財の割安化が進んだ上に、地元優先意識が根強い中で地域間の競争意識が強まっていたことから、2003年以降、鉄鋼等の一部の業種で投資が投資を呼ぶ過熱状態が発生した。また、国内の需給状況に関する情報の不足と政府の引き締め策強化の前に投資を実行しようとする駆け込み投資の拡大が状況を一段と悪化させた。
しかし、過剰投資の発生により資本財価格の割安感が後退した上に、供給過剰による企業の収益性悪化が徐々に拡大。政府の投資抑制策と相俟って早くも投資減速の兆しが見えてきた。最も実現可能性が高いと見られる標準シナリオでも2004年後半の投資の伸び率は年前半の前年比30％程度から同10％前後に大幅鈍化が見込まれる。
投資過熱の鎮静化は中国経済の持続的安定成長にはプラスだが、中国への生産財・資本財輸出拡大による景気押し上げ効果を享受してきた日本を始めとする周辺国経済には打撃となろう。特に、2004年中には投資抑制策の効果が出ずに2005年に一気に調整が起った場合には日本の実質ＧＤＰ成長率は対中輸出の減少によって標準ケース比で0.6％ポイント押し下げられる可能性がある。

中国の「投資過熱」発生のメカニズムと今後の動向

お問い合わせはこちら

テーマ・タグから見つける

テーマ

タグ