製造業の業況は順調な改善を続けているが、収益面に目を転じると大企業と中小企業の収益力に差がついており、足元で利益水準の格差は過去最大となっている。今回の回復局面における大企業と中小企業の利益の回復ぶりは、過去の回復局面に比べて最も足並みが揃っていない状況にある。
大企業の売上数量の回復は、好調な輸出やデジタル家電需要の回復によるところが大きいが、中小企業は大企業に比べてそれらの恩恵を受けにくく、出荷指数や実質売上高においても、格差が生じている。
企業規模別に売上原価の伸びをみると、大企業に比べて中小企業の伸びは大きい。仕入価格上昇分を販売価格にスムーズに転嫁できれば問題ないが、日銀短観で見ても、中小企業の価格転嫁は大企業と比べて進んでいない。結果として中小企業の利益率は悪化している。
雇用判断ＤＩ等のデータから均衡労働分配率を推計すると、中小企業の雇用過剰感が薄れてきている可能性がある。それでも、中小企業の固定費比率は大企業に比べて高い。大企業に比べて雇用者数の削減が進んでいないため、売上高人件費比率が高止まりしている。
2003年度の経常利益の前年比の伸びを要因分解すると、大企業では売上数量、利益率、固定費すべての要因がプラスに寄与しているのに対し、中小企業では売上数量の伸びによるプラス寄与を、利益率と固定費要因両方が押し下げている。損益分岐点比率をみると、大企業で低下しているが、中小企業では高止まりしている。
景気が回復して売上数量が伸びているため、大企業と中小企業の利益率格差の拡大に目が向かなくなっている。しかし、今後売上数量が落ち込むことになれば、中小企業の収益動向の悪化が再び注目されるようになる。中小企業は売上数量を伸ばす努力と同時に、利益率の改善や、コスト削減に注力していく必要がある。

製造業における大企業と中小企業の収益力格差

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