～2025年まで量的には問題ないが資源偏在のリスク、環境負荷増大に懸念～

2001年末の1バレル20ドル程度の水準から今年８月には一時的に50ドル近くに達するなど、原油価格の高騰が世界経済にとって大きな問題となっている。今般の原油価格高騰の一因が、中国など新興国の需要急増であるのは間違いない。そうした中で、今後、これら新興国が高成長を持続した場合に世界のエネルギー需給が一段と逼迫する事態が生じるのではないかとの懸念が台頭している。
エネルギー源の構成、原単位（１単位の生産に必要なエネルギーの量）、今後の経済成長率などを考慮し、2025年までの世界のエネルギー需要を予測した。高成長を続ける新興国にけん引される形で世界のエネルギー需要は年平均2.0％増加し、2025年の総需要量は2000年の1.6倍になる。こうした需要量に対して、埋蔵量、可採年数からみれば、主要エネルギー源である石油、石炭、天然ガスについては将来的にも供給が不足することはないと考えられる。
しかし、中東地域の政情不安などにより石油供給が不安定化するリスクには今後とも注意が必要だろう。エネルギー資源の地域的な偏在に起因するリスクはほぼ石油に限られるが、世界的にエネルギー源に占める石油のウェイトが高い（03年で37％）だけに無視できない問題である。原油価格の急騰は、エネルギー消費を抑え、経済の停滞を招こう。ただし、長期的には、需給は価格で調整される。代替エネルギーへのシフトなども考えられるため、価格は低下することになる。
新興国の経済成長に伴うエネルギー需要増加の問題は、長期的には需給ではなく、環境問題という形で顕在化する可能性が高い。新興国は総じてクリーン・エネルギー利用の割合が小さいため、エネルギー消費の増加は、そのまま二酸化炭素などの排出物の増加につながる。新興国が経済発展を続ける中で、地球環境を悪化させないようにするために、今後、先進国は自らの環境問題への取り組みに加えて、新興国の環境対策への一層の協力が求められることになろう。

新興国の台頭と世界のエネルギー需給見通し

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