～エネルギー多消費型経済への移行で需給の緊張が断続的に続く可能性大

ここ数年、生産・投資を中心に経済活動全般が勢いづく中、エネルギー需要の急増に伴う需給の逼迫が深刻な問題となっている。特に電力は2004年夏に26省・市・自治区で供給制限が実施され、生産活動に大きな悪影響が出た。電力を含めエネルギー消費の拡大トレンドは、エネルギー消費効率の改善が進んだ90年代前半までの状況とは大きく異なっており、その行方がエネルギー供給の問題とともに中国の持続的な成長の鍵を握っている。
エネルギー消費の実質ＧＤＰ成長率に対する弾性値をとると、90年代前半まではおよそ0.5、90年代後半はマイナスとなり、エネルギー効率の改善が進んだことが確認される。しかし、2000年代に入るとは弾性値が1を大きく超え、エネルギー消費効率が急速に悪化している。この要因としては、（1）省エネテンポの鈍化、（2）エネルギー多消費型の産業構造へのシフト、（3）エネルギー多消費型の消費形態の広がりなどがあげられる。
エネルギー供給は、エネルギー資源の埋蔵量でみる限り決して不足はしていない。しかし、マクロレベルでは需給均衡は可能かもしれないが、（1）石炭輸送の問題、（2）石油産出量のピークアウト、（3）電力向け設備投資の持続性の問題、（4）エネルギー資源の地域的偏在などにより、各エネルギー源や地域レベルなどでの需給は不均衡となりやすい状況にある。
エネルギー政策は、短・中・長期で作成されている。基本的に需要の抑制よりも供給拡大に期待するところが大きい。ただし、近年のエネルギー需給の逼迫により、需要の抑制や省エネにも力点が置かれるようになっている。しかし、総じて中国のエネルギー政策は、計画作成当初の数年は計画通りに進むが、その後は需要動向によって修正されるパターンが続いており、エネルギーの有効なコントロール策とはなっていない。
今後のエネルギー消費の動向を（1）現状ケースと（2）省エネケースに分けて推計したが、どちらのケースでも現在の政府等の供給計画を大きく上回る結果となった。中国への進出・事業展開拡大においては、エネルギー問題は一時的なものではなく、長期間にわたり存在するリスクとして認識し、対処する必要があろう。

中国のエネルギー問題の中長期的視点

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