～海外通貨当局のドル離れ加速なら米景気減速要因に～

2004年の海外からの対米証券投資（純流入額）は9,158億ドルと過去最高水準を記録し、貿易赤字額（6,515億ドル）を大幅に上回った。海外マネーの投資対象の中心である米国債は、2004年に3,568億ドルと４年連続で増加した。2004年の米国債投資の主体を地域別にみると、日本が1,664億ドル（シェア47％）と圧倒的に多い。また公的部門と民間部門に分けてみると、公的部門はドル買い介入の増加を反映して2,031億ドルと、民間部門を上回った。
ストック面に注目すると、海外諸国が保有する米国債の投資残高は2004年末に1兆9,360億ドルとなり、日本のシェアが36.8％と格段に大きい。また公的部門のシェアは2000年以来ほぼ60％で推移しているが、米国債全体に占める海外部門の保有シェアが上昇するなかで、海外公的部門（通貨当局）の米国債市場におけるウェイトは着実に高まっていると考えられる。
過去の例をみると、対米証券投資が拡大する局面で米国の流動性（マーシャルのk（M3/GDP））が増加する傾向にあることが確認できる。米国における流動性の増加は住宅価格の上昇につながっている。
2003年以降、大幅に拡大した海外通貨当局の米国債・政府機関債投資は、タイムラグを伴って米国の通貨供給量や住宅価格、実質GDPを押し上げてきたと試算される。一方、足元では、大幅に拡大した対米証券投資の持続性に対する懸念等からドル安予想が広がり、海外通貨当局の中にドル資産の保有割合を見直す動きも出ていると伝えられている。今後、海外通貨当局のドル離れが加速し、米国債・政府機関債投資残高の伸びの低下が続けば、通貨供給量や住宅価格の上昇率が鈍化し、米国景気が減速に向かう可能性がある。

大幅に拡大した米国向け証券投資

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