～　原油価格の上昇テンポ加速なら、ドル安・ユーロ高は一段と進む　～

○近年、原油価格の高騰が続くなかで、米国景気やドル相場が弱含み、経常収支不均衡が拡大している。本稿では、原油価格の変動が、米国景気やドル相場、経常収支不均衡に対してどの程度の影響を与えているのかを定量的に分析してみた。

○分析結果によれば、原油価格が10％上昇すると、米国の実質GDPは0.2％減少、ドル相場（実質実効ベース）は1％下落する。一方、原油価格の上昇が米国の経常収支に与える影響については、短期的には不均衡を拡大させるが、中長期的にみると影響は小さくなる。原油価格が上昇（下落）すると、輸入価格が上昇（低下）するため、米国の経常収支赤字は一時的に拡大（縮小）するが、やがて輸入数量が減少（拡大）するためと考えられる。また、米国の経常収支赤字を左右する要因としては、原油価格そのものだけでなく、米国景気（実質GDP）やドル相場の要因も重要である。仮に、米国景気の低迷（住宅市場の回復の遅れなど）やドル安が長期化すれば、米国の経常収支赤字が縮小することも予想される。

○推計によれば、原油価格の上昇は中長期的にみてドル安・ユーロ高を進行させる要因となる。また、原油価格の上昇によるユーロドル相場（名目ベース）の上昇圧力は近年強まっている可能性があるという結果が得られた。近年、欧州向けの輸出を大幅に拡大させたロシアやノルウェーなどの原油輸出国が対外資産をドルからユーロに分散化させている可能性がある。足元の外国為替市場ではユーロ相場が上昇しているが、今後、原油価格の上昇テンポが加速すれば、ユーロ高傾向が一段と強まる可能性が高いと予測される。

原油価格の上昇とドル安・ユーロ高

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