個人消費の現状と今後の見通し ~新型コロナウイルスによる活動自粛で、消費は大幅に下振れ~

2020/03/13 藤田 隼平
調査レポート
国内マクロ経済

○消費税率引き上げ直後の2019年10-12月期の個人消費は、前期比▲2.8%(年率▲10.6%)と大きく落ち込んだ。もっとも、前回増税時よりも実質所得の減少は限定的であったため、駆け込み需要の反動減や暖冬、台風といった一時的な下押し要因が剥落することで、2020年1-3月期以降、個人消費は持ち直していくはずであった。

○しかし、年明けに新型コロナウイルスの問題が顕在化し、特に本年3月以降に自粛ムードが強まったことでレジャー関連を中心に個人消費は大きく下振れると予想される。現時点では少なくとも3月いっぱいは自粛ムードが続くとみられ、レジャー関連消費の抑制により3月の個人消費は▲2.0兆円程度下押しされると予想される。このため、10-12月期の一時的な下押し要因が剥落したとしても、個人消費が2期連続で減少することは避けられない。

○本年3月10日に当社が公表した短期経済見通しでは、メインシナリオとして、4-6月期中には感染拡大がピークアウトし、経済活動は徐々に平常化へ向かうとの前提を置いている。この前提に立てば、新型コロナウイルスによる下押しは一時的なものであるため、自粛ムードが和らげば、個人消費は緩やかに持ち直していくと考えられる。特に今夏は東京五輪という一大イベントが控えており、活動自粛で抑制されたレジャー関連の消費が夏場にかけて一気に増加すると予想される。

○しかし、自粛期間について3月10日に政府が当初の「2週間程度」からさらに「10日間程度」の延長を要請するなど、現時点で収束の目途は立っていない。仮に新型コロナウイルスの問題が長引くようだと、底堅さの見られる財消費にも悪影響が生じ、さらにはアベノミクス開始以降改善を続けてきた雇用・所得環境にも悪影響が及び、個人消費が一層減少するという負のスパイラルにも陥りかねない。

○政府の最優先課題は新型コロナウイルスのさらなる感染拡大を阻止することだが、それは同時に人や物の移動を制限し、経済活動をも抑制するため、景気にはマイナスである。このため、政府は景気の悪化を和らげるために積極的な取り組みを実施または実施を検討している。今後、新型コロナウイルスの収束に目途が立ってくれば、それら対策効果もあって、深い後遺症を残すことなく、日本経済が早期に立ち直ってくれるものと期待される。

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