ポーランド経済の現状と今後の注目点~EUの中でも堅調な経済、ウクライナ戦後復興ビジネスの拠点として注目~

2023/11/30 堀江 正人
調査レポート
海外マクロ経済
  • ポーランドは、2004年のEU加盟以降、年次ベースの経済成長率が一貫してEU全体の経済成長率を上回ってきた。ポーランド経済は、内需の規模が大きく、チェコやハンガリーのような「輸出一本足打法」の経済ではなく、個人消費と輸出が両輪となって成長を支えている点が特徴的である。
  • ポーランドは、2022年に、インフレ急加速により個人消費が打撃を受け、また、エネルギー価格上昇という逆風を受けて投資も縮小したため、2022年4~6月期以降、景気は急減速し、2023年1~3月期には経済成長率がマイナスに転落した。ただ、その後のインフレ鎮静化に伴う利下げなどを受けて、2023年下半期からは、景気が回復に向かうと見られている。
  • コロナショックが発生した2020年に、中銀は、景気下支えのため政策金利を0.1%まで引き下げたが、2021年からはインフレ急加速を受けて政策金利を大幅に引き上げ、2022年初秋には6.75%とした。その後、2023年8月にインフレ率が1ケタ台に低下したことから、中銀は、2023年9月に、インフレ圧力の沈静化と需要の弱さを理由に75bpsの利下げを実施し、10月にも25bpsの利下げを実施した。
  • 一般政府部門の財政赤字は、2015年にGDP比2.6%となり、マーストリヒト基準(3%)をクリアしたが、2020年には、コロナショックにより赤字は拡大し、2021年にはコロナ禍の沈静化で赤字は縮小したが、2022年には再び赤字が拡大した。他方、一般政府部門債務残高の対GDP比率を見ると、ポーランドは、マーストリヒト基準(60%)をEU加盟以降ずっとクリアしている。
  • 通貨ズウォティは、2013年以降、対ユーロ為替相場に急激な変動が見られなくなり、安定的に推移している。この点で、ポーランドのユーロ導入の条件は整いつつあると言えよう。しかし、ポーランドのユーロ導入への道のりは遠い。その理由は、国民の間で、独自通貨を保持し金融政策の自主性を保つ方が良いとの意見が強く、また、ユーロ導入の際には憲法改正も必要であり、ハードルが高い。こうした状況を踏まえると、ユーロ導入は、経済ファンダメンタルズ的に可能でも、実施は当面困難であろう。
  • ポーランドの経常収支は、足元で赤字が拡大しているが、2010年代には、輸出拡大による貿易赤字縮小と、海外企業向けの事務サービスや輸送サービスの代価受取によるサービス収支黒字拡大のため、経常赤字は縮小傾向だった。ポーランドの経常赤字をオフセットし、また、産業競争力を高めるのに重要な役割を果たすのが、直接投資(FDI)の流入である。2021年からは、EV(電気自動車)用バッテリー製造関連のFDIが拡大し、また、データセンターやクラウド技術開発センターなどIT関連のFDIも拡大したことなどから、2021年と2022年のFDI流入額は、2020年の2倍に増えている。
  • ポーランドは、さほど大きな国ではないが、新興国における日系企業の一大集積地である。外務省の統計によれば、ポーランド進出日系企業拠点数は350を超え、東欧・中東・アフリカ地域において、ロシアに次ぐ第2位である。ポーランドの大きなメリットは、製品をEU域内向けに関税なしで輸出でき、人件費が西欧に比べて格段に低いことである。また、ウクライナの戦後復興支援ビジネスにおける拠点としてポーランドの重要性に対する外国企業の関心が高まっている。さらに、今後、EU域内環境規制厳格化に伴い、CO2排出の少ない発電所やゴミ焼却施設などの発注がビジネスチャンスとして期待される。

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