厚生労働省の「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」によると、2023年の日本における外国人労働者数は205万人と、2018年からの5年間で1.4倍に増加した。特に東南アジアからの労働者の増加が顕著であり、労働力不足が続く中、今後も同地域からの労働者の受け入れは増加が続くと予想される。
もっとも、東南アジアからの海外就労先として、日本は選択肢の一つにすぎず、他にも韓国・台湾など東アジアの先進国、中東、東ヨーロッパ、相対的に経済水準の高い東南アジアの国と、就労先はさまざまな国に広がる。実際、労働者の渡航先は国によって異なる傾向があり、地理的な条件、言語を含む文化、賃金水準など、さまざまな条件が影響しているとみられる。国別の就労先をみると、ベトナムからは日韓台といった東アジアの先進国、フィリピンからは中東、ネパールからはインドおよび中東、インドネシアからは東アジアおよびマレーシア、ミャンマーからは近隣の東南アジア諸国が主な行き先となっている。
一方、受け入れ側の各国では少子高齢化の進展により人手不足が深刻化しており、外国人労働者の獲得競争は今後ますます激しくなることが予想される。日本が必要な労働力を確保するためには、賃金の引き上げや住環境・労働環境の改善、就労や滞在に関する規定の改正を進めていくことが必要不可欠であろう。直近では日本における技能実習制度が育成就労制度へ変更されることとなり、より継続的な就労と転職機会が広がることが期待されているが、今後も状況に応じた迅速な対応が重要となる。
日本で就労する外国人労働者は、長年にわたりベトナムや中国出身者が中心であったが、近い将来、これらの国では経済成長によって海外就労者が減少し、替わってカンボジアやミャンマーから日本へ渡る労働者が増えるとの予想もある。送り出し国側の政治情勢や経済状況も労働者の国際移動の流れを変える要素になることから、ベトナムや中国以外の国への労働者誘致に力を入れていくことも喫緊の課題と認識する必要がある。
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