物価上昇を背景に名目個人消費は増加が続いており、四半期ベースでは2025年1～3月期には過去最高を更新した。他方、実質個人消費は新型コロナウイルス感染拡大後の落ち込みから回復した後、物価が上昇しはじめた2022年以降、伸び悩んでおり、四半期ベースではコロナ禍前の水準を上回ることができていない。こうした実質個人消費の動向は基本的には実質可処分所得の動向を反映したものと考えられる。
名目個人消費が増加する中、家計貯蓄率はコロナ禍以前よりも高い水準にあり、所得面からみると消費をさらに増やすことは可能ではあるものの、相対的に抑制される形となっている。家計貯蓄率の動向からは消費者の消費意欲が高まっていない可能性がある。
消費者マインドを表すと考えられる消費者態度指数と、消費者が予測する1年後の物価上昇率の動向をみると、2021年の終わりごろから、予想物価上昇率が上昇すると消費者態度指数が低下する傾向がみられており、消費者マインドは物価上昇の影響を受けていることがうかがえる。足元では物価上昇が続く中、消費者マインドは低迷している。
物価高が続く中、物価高対策として野党を中心に消費税減税を訴える声が多くなっている。消費税減税は、家計の負担軽減につながる一方、物価上昇の影響を大きく受けていると考えられる低所得世帯よりも高所得世帯で減税額が大きくなるという問題がある。また、税率を引き下げるためには法改正が必要となるため、実施までに時間がかかることや財源に関する問題があることに留意する必要がある。
物価高が続く中、実質個人消費の増加のためには実質家計可処分所得の増加が必要である。日本の家計が受け取る所得の構成比を他の先進国と比較すると雇用者報酬の割合が高いことから、家計の実質可処分所得の増加に向けては実質賃金の増加が重要である。米国のトランプ大統領による関税引き上げにより経済の先行きが不透明な中、今後も実質賃金の増加に向けて高水準の賃上げを実現できるかが課題となろう。

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物価高の下での消費動向～低迷する実質個人消費と消費者マインド～

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