一般政府が保有する金融資産の多くは中央政府と社会保障基金が保有するものであり、社会保障基金の金融資産の大部分は公的年金積立金である。一般政府の負債のほとんどは中央政府と地方政府のものであり、特に中央政府の規模が大きい。一般政府の中で、金融資産、負債とも規模が大きいのは中央政府である。
中央政府の負債の多くは国債・財投債であり、金融資産は、対外証券投資、現金・預金、出資金が含まれる持分等・投資信託受益証券などが中心である。2024年度末時点で外貨準備として保有している対外証券投資などの対外資産の合計は金融資産全体の約5割を占めている。
政府が保有する金融資産の中には公的年金積立金や外貨準備のように、特定の使途や目的に基づいて保有しているものがある。こうした資産が増加して政府の純負債残高対GDP比が低下しても実際には財政状況の改善につながっているとは必ずしも言えないことに留意する必要がある。
近年は対外資産などの金融資産の増加が純負債残高対GDP比の低下の一因となっているが、金融資産を考慮しない負債残高対GDP比も低下している。その主な要因として物価上昇や、金利上昇に伴う時価ベースでみた残高の減少があげられる。
高市政権は「責任ある積極財政」を掲げて、戦略的に財政出動を行っていく方針を示しており、歳出拡大の財源を確保するために国債が発行される可能性がある。現在のように物価上昇率が高い状況が続くという想定の下では、国債を発行して歳出を拡大させた場合、財政収支は赤字であっても債務残高対GDP比は悪化しない可能性がある。もっとも、今後、物価上昇が落ち着く中で実質GDP成長率を引き上げることができなれば、債務残高対GDP比の引き下げのために国債発行額の増加を抑制せざるを得なくなるだろう。

続きは全文紹介をご覧ください。

ストックからみた日本の財政状況～物価上昇により政府の負債残高対GDP比が低下～

執筆者

お問い合わせはこちら

テーマ・タグから見つける

テーマ

タグ