～企業部門の活力が問われる少子高齢化時代～

○わが国経済は2002年初めをボトムにした景気回復局面にある。バブル崩壊後、雇用や債務の過剰問題、不良債権問題、資産デフレなど、さまざまな構造問題が、低成長の要因として挙げられてきたが、バブル崩壊後3回目となる今回の景気回復は、持続的な成長に復帰するきっかけになるとの期待も出ている。そこで、(1)少子高齢化の進展、(2)企業部門の活力の回復、(3)グローバル化の進展という重要な環境変化を切り口にして、日本経済の中期展望を試みた。

○少子高齢化の進展は、労働力の減少を通じて日本経済の潜在成長力を抑え、消費の伸びも抑制する。また、医療費や介護費など経常的な支出を増加させるため、財政赤字が拡大する。少子高齢化、人口減少時代を迎える中で、活力ある企業の存在は重要である。バブル崩壊でダメージを受けた日本企業はバランスシートを圧縮し、高収益分野へ生産資源を集中することにより、収益性を高めてきた。また低金利のもとで投資採算が改善してきており、設備投資が出てくる環境は整ってきた。

○経済のグローバル化が進み、中国をはじめとするアジアの供給力が質･量ともに拡大することが見込まれるため、日本企業は厳しい競争に晒される｡対アジアを中心に日本の貿易黒字は縮小すると予想されるが、輸出と輸入を合わせた海外との取引の増加は日本経済にプラスに働くであろう。

○日本の潜在成長率は90年代後半には1.0%程度まで低下していたとみられるが、2005～2008年度には1.6%程度まで上がってくると予測している。少子高齢化の影響により労働の寄与はマイナスが続くが、設備投資の回復から資本の寄与はプラス幅の縮小がとまり、企業部門の経営努力やIT革命の成果により全要素生産性が向上するであろう。

○2003年度は2.7%程度の成長が見込まれるが、2004年度は後半から景気が減速するため1.9%成長と鈍化し、2005年度は後半から景気が持ち直すものの、年間では0.4%の低成長を見込んでいる。しかし、2006年度は2.3%の成長を見込む。これは、景気の回復力が増す上に、2007年4月に想定している消費税の引き上げによる駆け込み需要も寄与するからだ。2007年度はその反動から成長率は1.2%に鈍化するが、大幅な調整には至らず、2008年度も景気の回復が持続し1.9%の成長が予想される。

○5年後の日本経済のイメージを考えてみると、まず、社会全体が成熟型社会へ移行する。このため、経済全体に占める投資のウェイトは低下し、消費のウェイトが増してくる。投資主導の高い経済成長率を実現することは難しくなってくるが、これまでに蓄えたストックがあるため所得のより多くを消費に回すことができる。

○財政は経常的な支出が増加する一方で、税収が伸び悩むため、慢性的な赤字構造が続く。持続可能な社会保障制度という観点からの歳出の見直しや少子高齢化時代に見合った税体系の検討が必要になってこよう。

○企業物価や消費者物価でみたデフレは2006年に終息し、同年度中に量的緩和政策も解除される。金利や株価も上昇に転じてくるが、地価はマイナス幅が縮小するものの下落傾向が続くであろう。

日本経済の中期見通し（2004年度〜2008年度）

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