～安定成長の背後に隠れる景気減速の影～

○景気は回復を続けている。今年１～３月期の実質ＧＤＰは前期比＋0.5％と堅調に増加した。世界経済の成長を背景に輸出が拡大しており、鉱工業生産も緩やかながら増加傾向を維持している。企業収益の改善に支えられて設備投資は拡大基調にあり、雇用や所得の持ち直しとともに個人消費も緩やかな増加が続いている。

○景気回復はしばらく続くだろう。2006年度は、企業収益の伸びが鈍化して設備投資の伸びが前年より低くなるものの、個人消費の着実な回復が続く。実質成長率は、2005年度よりは低下するものの、＋2.0％と５年連続のプラス成長が予想され、名目成長率も＋1.7％と４年連続のプラス成長が見込まれる。

○2007年度に入っても景気の拡大が続き、実質成長率は＋2.1％と予測した。また、ＧＤＰデフレーターがプラスに転じ、名目成長率は＋2.4％と実質成長率を上回ると予想した。景気が過熱することは考えにくく、在庫の積み上がりや過剰設備の拡大といった景気を腰折れさせる要因が生まれにくい。また、2008年４月に消費税率の引き上げを想定しており、引き上げ前の駆け込み需要が生じることも成長率を高める要因となる。

○日本経済は、原油価格の高騰やドルの暴落など世界経済を腰折れさせるような外生的なショックがなければ、安定的な拡大を続けるだろう。ただ、その背後には景気減速の影が隠れている。まず、新興工業国の成長に影響された「原材料高･製品価格安」という新たな価格体系は日本企業の収益を圧迫する。また、デフレ脱却の影響も無視できない。人件費など固定費の増加は企業収益を下押しするし、消費者物価の上昇は家計の実質所得を目減りさせる。もっとも、これら隠れた景気減速要因は注意が必要であるが、すぐに顕在化するものではない。しばらくは２％程度の成長軌道が続くであろう。

2006／2007年度改訂経済見通し(2006年5月）

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