～デフレ脱却とともに広がる景気減速の影～

○景気は回復を続けている。今年４～６月期の実質ＧＤＰは前期比＋0.2％と、小幅ながら６四半期連続のプラス成長となった。世界経済の成長を背景に輸出の増加が続いており、鉱工業生産も増加ペースが増している。高水準の企業収益に支えられて設備投資の拡大スピードが速まっており、雇用や所得の持ち直しとともに個人消費も緩やかな増加が続いている。

○景気の回復は今後も続く。2006年度の実質経済成長率は輸出、設備投資、個人消費を中心に＋2.1％と５年連続の、また、名目成長率も＋1.9％と４年連続のプラス成長が見込まれる。ただ、年度後半はデジタル関連財の生産調整や米国経済の減速により景気がややスローダウンする。

○2007年度は、前年度からの景気減速の動きが前半は続くが、景気後退に至るものではなく、実質経済成長率は＋2.0％と予測した。また、ＧＤＰデフレーターは＋0.5％と10年ぶりにプラスに転じ、名目成長率は＋2.5％と実質成長率を上回ると予想した。個人消費の増加は緩やかなものにとどまるが、景気の回復基調を支える。また、デジタル関連の調整が一巡し、世界経済が再加速するとともに、年度後半には日本からの輸出が加速して、景気回復の勢いが増してくる。

○日本企業は、一次産品価格の高騰を震源とするコスト上昇の波に洗われている。これまでは、「固定費の圧縮という企業努力と、世界経済の成長という恵まれた環境を活かしながら、価格転嫁を抑えて収益を確保する」という非インフレ的な企業行動によって、原材料価格が上昇しても景気回復を続けることができた。しかし、固定費も上昇に転じ、企業収益を取り巻く環境は厳しさを増している。原材料価格の上昇を消費者にまで転嫁するというインフレ的な企業行動が広がってくると、個人消費を中心に景気の先行きに懸念材料が出てくる。デフレ脱却とともに景気減速の芽が広がるリスクには注意が必要であろう。

2006／2007年度経済見通し（2006年8月）

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