2023/2024年度短期経済見通し(2023年3月)(2次QE反映後)~下振れ懸念が強まるも、アフターコロナ期に移行することで景気は緩やかな回復基調を維持~

2023/03/10 調査部
日本経済短期見通し
GDP
国内マクロ経済
  • 3月9日発表の2022年10~12月期の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比+0.02%(年率換算+0.1%)と1次速報の同+0.2%(同+0.6%)から下方修正された。かろうじてプラス成長は維持した形となったが、在庫寄与度が大幅なマイナスとなった影響が大きく、在庫を除いた最終需要は前期比+0.5%(年率換算+2.0%)と底堅く伸びており、1次速報値の段階の「景気は緩やかに持ち直している」との判断に変更はない。
  • 1~3月期も景気の緩やかな持ち直しが続く。①感染第8波の収束、全国旅行支援の効果により、対面型サービスを中心に個人消費の増加が続く、②水際対策緩和や円安効果でインバウンド需要が伸びる、③在庫寄与度が大幅なマイナスとなった反動が出やすいなどが理由である。一方、物価高による財消費の不振や海外需要低迷による輸出の弱含みが回復の重しとなろう。この結果、2022年度の実質GDP成長率は前年比+1.2%になると予想する。
  • 2023年度には、コロナ禍による経済社会活動への制約がほぼ解消され、景気が感染状況に左右されないアフターコロナ期に移行するであろう。感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ5類に変更される予定である大型連休明けの5月8日が一つの目途となろう。このため、家計部門においては、これまで抑制されてきた対面型サービスへの支出増加など平時への復帰が、企業部門においては、これまで手控えられていた設備投資の再開やアフターコロナ期を見据えての前向きな投資の増加が景気を押し上げる原動力となり、基本的には内需を中心に緩やかな景気回復が続く。また、雇用情勢の改善、賃金の上昇、インバウンド需要の増加が続くこともプラス材料である。
  • ただし、年度中は政策効果によって物価上昇率が抑制されると想定しているが、それでも家計のインフレ警戒感を背景に節約志向が強まる可能性があるほか、実質賃金の低迷が長期化するようであれば、個人消費の回復が遅れることになろう。リベンジ消費もいずれ一巡する見込みである。加えて、海外経済の低迷や世界的なIT関連財の需要減少で輸出が減少する、人手不足を背景に供給制約が発生する、自動車の生産制約の解消が遅れるといったマイナス材料が加わることで、景気回復テンポが大幅に鈍るリスクがある。
  • 2023年度の 実質GDP成長率は前年比+1.1%を予想する。物価上昇や海外経済の減速による下振れが懸念されるが、アフターコロナ期に移行する中で、内需を中心に緩やかな景気回復が続き、景気の腰折れは回避される見込みである。年度末にかけて、海外経済が回復基調に転じ、物価上昇圧力が落ち着いてくれば、次第に景気回復の足取りもしっかりとしたものになってくるであろう。
  • 2024年度も前年比+1.2%とプラス成長を見込む。物価上昇率の鈍化、海外経済の回復といったプラス要因がある一方で、コロナ禍からの回復による押し上げ効果が一巡するため、引き続き緩やかな回復テンポにとどまろう。

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