2023/2024年度短期経済見通し(2023年9月)(2次QE反映後)~経済社会活動の正常化を反映して景気は緩やかな回復基調を維持~

2023/09/11 調査部
日本経済短期見通し
GDP
国内マクロ経済
  • 9月8日発表の2023年4~6月期の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比+1.2%(年率換算+4.8%)と1次速報の同+1.5%(同+6.0%)から下方修正された。依然として高い伸びであるが、輸入減少による押し上げ効果が大きいなど見かけほど強い内容ではなく、引き続き景気の回復ペースは緩やかであると判断される。
  • 4~6月期の成長率を大きく押し上げたのが外需である。自動車輸出やインバウンド需要増加によって輸出が堅調に伸びると同時に、内需の弱さやエネルギー輸入減少により輸入が3四半期連続で減少したことで、前期比への外需寄与度は+1.8%(1次速報から修正なし)に膨らんだ。一方、前期比に対する内需寄与度は-0.6%(同-0.3%を下方修正)とマイナスに陥った。コロナ禍の終息に向けた動きが強まる中で宿泊・飲食サービス、レジャーなどサービスへの支出は増加したが、物価高の影響で財への支出が落ち込み、個人消費は前期比-0.6%とマイナスとなった。また、企業の設備投資意欲は底堅いものの、前期に急増した反動もあり、設備投資は前期比-1.0%と落ち込んだ。
  • 7~9月期の成長率は前期比マイナスに転じる可能性が高い。もっとも、今回の高成長の反動によるもので、緩やかな景気回復が続く中でのスピード調整の動きである。個人消費は、夏場のサービス需要の盛り上がり、自動車販売の増加から前期比プラスに転じる見込みであり、輸出も増加基調が続くため、景気が腰折れする懸念はない。
  • 10~12月期以降は、再びプラス成長に復帰する見込みである。リベンジ消費の盛り上がりも夏頃には一巡する見込みだが、雇用・賃金の増加を背景に個人消費の増加基調が維持されることや、アフターコロナ期に移行するにあたっての企業の前向きな設備投資の増加が、景気を押し上げる原動力となる。年度末にかけて、海外経済が回復基調に転じ、物価上昇圧力が落ち着いてくれば、次第に景気回復の足取りもしっかりとしたものになってくるであろう。2023年度の実質GDP成長率は前年比+1.6%を予想する。
  • もっとも、引き続き景気の下振れ要因が多く、回復ペースが加速することはない。物価高対策が今年度末まで延長されると想定しているが、それでも物価高の抑制に限界がある。このため、家計の節約志向が強まることや、実質賃金の低迷が長期化することによって個人消費の回復が遅れる可能性がある。加えて、海外経済減速や世界的なIT関連財の需要低迷長期化で輸出が減少する、人手不足を背景に供給制約が発生するといったマイナス材料が加わることで、景気回復テンポが大幅に鈍るリスクがある。
  • 2024年度は前年比+1.0%、2025年度は同+1.3%とプラス成長が続くと見込む。コロナ禍からの回復による押し上げ効果は一巡するものの、タイトな労働需給を背景とした名目賃金の上昇、物価上昇率の鈍化、企業の設備投資に対する前向きな姿勢、海外経済の回復といったプラス要因により、緩やかな景気回復基調が維持されよう。

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