○足元の価格動向：ＯＰＥＣが緊急総会の開催を決定したことから、減産を見越して30ドル台に再上昇する局面もあったが、緊急総会での決定が事前の予想を下回る減産内容となり、25ドル台まで下落した。その後は、ＯＰＥＣが6月11日に開催予定の臨時総会で追加減産を行なうとの思惑にも影響されて28ドル弱まで戻している。なお、5月末とされていたイラクの産油量回復（150万b/d）が1ヵ月先送りされたことが、今後、原油価格の押し上げ要因として影響してくる可能性がある。

○市場参加者別のポジション：投機筋のポジション解消の動きは一服。一方で、当業者の買い持ち状態が続いている。

○米国在庫の動向：米国の民間原油在庫の積み上がりが価格を押し下げる要因として働いている。また、寒波が長引いた影響で記録的な低水準にあった中間溜分（灯油、軽油等の総称）在庫が、足元で増加に転じた。気温の上昇を受けて、暖房油需要が減少したことが主因。

○ＯＰＥＣの生産動向：ＩＥＡによると、3月のＯＰＥＣ10ヵ国の生産量は2588万b/dとなった。ＯＰＥＣは4月24日の緊急総会でＯＰＥＣ10ヵ国にイラクの生産を加えたベースで200万b/dの減産を決定する一方、ＯＰＥＣ10ヵ国の生産枠を2540万b/dに90万b/d引き上げた。そのため、新しい生産枠は3月の生産量と比べて実質48万b/dの減産にしかならない。

○トピック：中国でＳＡＲＳ（重症急性呼吸器症候群）感染者が急増しており、工場閉鎖や市民の外出抑制、観光客の減少などによる実体経済への悪影響が懸念されている。そのため、中国の生産活動が停滞してエネルギー源としての原油に対する需要が落ち込めば、価格下押し圧力が働くとの懸念がある。しかし、中国の需要量が世界需要の約4分の1を占めるプラチナや、約4割前後を占める羊毛（豪州産）と比べて、中国の原油の需要量は世界需要の約6.8％（輸入量に限れば約1.8％）しかない。ＳＡＲＳ流行で中国の原油需要が落ち込んでも価格への影響は限定的であろう。

原油レポート No.5 ＳＡＲＳ流行で中国の原油需要が落ち込んでも、価格への影響は限定的

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