○足元の価格動向：5月に入って原油価格は強含みで推移している。4月下旬に25ドル台まで下落した原油価格（ＷＴＩ期近）は、足元で29ドル台に再上昇するなど、戦争終結で供給不安が薄れているにもかかわらず、上昇圧力が強い。

○市場参加者別のポジション：足元では投機筋の売り持ち幅が縮小し、価格押し上げ要因となっている。当業者は買い持ち状態が続いている。

○米国の在庫動向：在庫は低い水準から積み上がっていたが、5月に入ってからは積み増しが一服。ガソリン在庫は需要期に備えた積み増しペースが遅く、過去5年間で最低水準。

○ＯＰＥＣ・非ＯＰＥＣ産油国の生産動向：5月22日に国連安保理は対イラク経済制裁解除決議を採択した。これを受けて、イラクは6月中旬までに原油輸出を再開する見通しである。しかし、石油関連施設が略奪・破壊による被害を受けており、イラクの生産量が150万b/dに回復するのは当初見込みの5月末から1ヵ月ほどずれ込む模様である。

○トピック：供給過剰から原油価格は下落するとの見方が支配的であったが、5月に入って29ドル台（ＷＴＩ期近）まで上昇するなど、実際には逆のことが起きている。価格押し上げ要因としては、(1)低い水準にある在庫がなかなか増えないこと、(2)足元ではイラク原油の生産回復ペースが遅れていること、(3)ＯＰＥＣが6月の臨時総会で今年2度目の減産を決定するとの観測があること、(4)サウジアアラビアで爆弾テロ事件が発生するなど中東地域の政情不安が高まっていること、などが考えられる。そして、開戦前から買いポジションを解消していた投機筋が、これらの価格押し上げ要因を材料に再び買いを活発化させていることが価格を押し上げる一因となっている。

原油レポート No.6 原油価格再上昇の背景に投機マネーの流入

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