○足元の価格動向：5月以降、原油価格は強含みで推移している。6月初めには1ヵ月半ぶりに30ドルを越えた。ＯＰＥＣの減産に対する期待、原油在庫が低い水準にあること、イラクの原油生産の回復が遅れていることなどを材料に価格上昇圧力が強まっている。

○市場参加者別のポジション：ＯＰＥＣの減産に対する期待もあり、投機筋の買いポジション（グロス）が増加している。一方、当業者は戦争終結で価格先高観が薄れていることもあり、買いポジション（グロス）の減少が続いている。

○米国の在庫動向：夏季のドライブシーズン本格化を前にしたガソリン増産を受けて、米国の民間原油在庫は5月に入ってからは積み増しが一服していた。ただし、足元では原油輸入が大幅に増加していることを受けて、在庫が積み上がっている。

○ＯＰＥＣの生産動向：ＯＰＥＣ10ヵ国の生産は積極姿勢が続いている。6月11日のＯＰＥＣ臨時総会で減産が決まるとの見方もあるが、価格が強含みで推移していることから生産枠を据え置く（減産はしない）との見方が強まっている。

○トピック：イラクの原油生産・輸出の回復ペースが当初見込みより遅れており、価格押し上げ要因となっている。イラクの生産回復が遅れている理由としては、治安が依然として悪いこと、関連施設や事務所、住宅が略奪・破壊されているため従業員が復帰できないこと、経済制裁により原油輸出が止まったままであることなどがある。先行きについては、5月22日に国連安保理で経済制裁解除決議が採択されたことを受けて、イラクは6月中に輸出を再開する予定である。生産施設の復旧という技術的な問題を除けば、輸出再開によって原油生産が短期間で回復することが期待される。しかし、外国の石油会社はイラクに正式な政権が発足するまで取引には慎重であることから、輸出再開がスムーズにいくかは不透明である。イラクの原油生産が短期間で回復するかどうかは、技術的要因だけでなく政治的要因に負うところが大きいと言える。

原油レポート No.7 イラク：政治的要因の影響が大きい原油生産の回復ペース

お問い合わせはこちら

テーマ・タグから見つける

テーマ

タグ