○足元の価格動向：7月31日のＯＰＥＣ臨時総会では生産枠据え置きが決定されたものの、生産枠据え置きの決定は価格に織り込み済みであった。ただし、足元ではイラクのパイプライン爆破をうけて、イラクの原油生産の回復が一段と遅れるとの思惑から32ドル強まで上昇している。

○市場参加者別のポジション：低在庫を材料に買い建玉が膨らむ傾向にあり、投機筋のポジションは買い持ちが続いている。一方、価格が高水準で安定しているため、原油生産者は売りポジションを維持し、エンドユーザーは買いポジションを徐々に減らしている。その結果、当業者のポジションは売り持ちとなっている。

○需給動向：現在の価格水準は割高観が強く、供給サイドが在庫の積み増しに消極的な一方で、最終需要は堅調なことから、原油在庫は需給逼迫の目安とされる280百万バレルを割り込んでいる。

○ＯＰＥＣの生産動向：イラクの生産回復の遅れを背景に価格がプライスバンドの上限近辺で推移しており、7月31日のＯＰＥＣ臨時総会では生産枠は据え置かれた。

○トピック：ＷＴＩ原油市場に影響する要因には、グローバル（世界的）なものとリージョナル（地域的）なものがある。前者は世界の需要、供給、在庫量で、後者は米国の需要、供給、在庫量である。特に、短期的な価格動向については、リージョナルな要因が影響しているようであり、なかでも相対的な供給過剰・不足を示す在庫量が市場の動向を大きく左右する。イラク戦争終結後も価格が上昇したのは、米国の原油在庫量の減少に示されたリージョナルな供給不足懸念が主因であったと考えられる。そこで、説明変数に米国の原油在庫量を用いてＷＴＩ原油価格の推計を試みた。その結果、足元の原油在庫量から求められる原油価格は29.4ドルとなり、グローバルな要因からみると高過ぎるとの声が少なくない30ドルの価格水準が、おおむね妥当な水準であるとの結果になった。この分析をもとにすると、先行きについては、平均的な季節パターンでは9月まで在庫の取り崩しが進むため、しばらくは30ドル近辺で高止まりする可能性が高いと言える。

原油レポート No.11 米国原油在庫の水準に基づいた原油価格の推計

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