○足元の価格動向：イラクの爆破テロを受けて32ドル強まで上昇した原油価格（ＷＴＩ期近）は、小幅ながら原油在庫が積み上がったこと、イラク北部のパイプラインが稼動を再開したことなどから一段の上昇には歯止めがかかった。ただし、稼動を再開したばかりのイラク北部のパイプラインが爆破されたとの報道が16日にあり、価格が強含む可能性がある。

○市場参加者別のポジション：イラクの爆破テロを材料に買い建玉が膨らみ、投機筋のポジションは買い持ち幅が拡大した。一方、価格が高水準にあるため、原油生産者の売り建玉は増加傾向。また、一段の価格上昇は見込みにくいこともあり、エンドユーザーの買い建玉は減少傾向。当業者のポジションは売り持ち幅が拡大した。

○需給動向：原油在庫は小幅ながら3週連続して増加した。背景には、8月半ばにはガソリン需要のピークが過ぎることや、天然ガス価格の上昇が一服し、重油に対する代替需要が落ちてきたことがある。ただし、在庫の積み上がりペースは鈍く、依然として需給逼迫の目安とされる280百万バレル台である。

○ＯＰＥＣの生産動向：7月のＯＰＥＣ10ヵ国の生産量は2586万b/dと、生産枠を比較的よく守っていることが価格押し上げ要因として働いている。また、イラク暫定統治当局によると、イラクの生産量は8月までに120万b/dを回復した模様。

○トピック：米国の天然ガス価格は、エネルギー供給源として代替性のある原油価格との連動が強い。今年に入って原油価格が高騰すると、代替需要の膨らんだ天然ガス価格も高騰した。天然ガスは中東産原油と比べると中東情勢緊迫化の影響を受けにくいこともあり、需要が拡大し、天然ガス価格は一時6ドル台から20ドル近くまで跳ね上がった。しかし、価格高騰によって天然ガスの需要は減少し、暖房用や発電向けの重油に対する代替需要が盛り上がった。そのため、今年に入って重油需要は前年比で5割強の伸びを記録するなど、原油在庫の減少に影響していたと考えられる。ただし、足元では天然ガス価格の上昇は一服してきており、重油に対する代替需要も落ちてきている。原油在庫を低水準にとどめていた要因が1つ解消に向かう見込みである。

原油レポート No.12 米国の天然ガス価格高騰とその影響について

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