○足元の価格動向：原油価格（ＷＴＩ期近）は、パイプライン爆破など治安悪化でイラクの生産・輸出回復が妨げられていることや、米国のガソリン需給が逼迫していることなどに影響されて、30ドルを越える推移が続いている。

○市場参加者別のポジション：イラクの治安悪化を材料に買い建玉が増加していたが、足元では利益確定のため買い建玉が減少しており、投機筋の買い持ち幅は縮小。一方、当業者のポジションをみると、価格が割高にも関わらず買い建玉が3週連続で増加している。価格が一時32ドル台に跳ね上がったこともあって、さらなる価格上昇に備えたエンドユーザーのヘッジ買いが増えた可能性がある。

○需給動向：原油在庫は3週連続して増加した後、2週連続して減少するなど、一進一退となっており、低在庫の状態が続いている。また、足元では需要の回復を受けてガソリン在庫が急減し、需給逼迫がガソリン価格の上昇を招いている。

○ＯＰＥＣの生産動向：6月以降、ＯＰＥＣが生産枠をよく守っていることが価格押し上げ要因として働いている。しかし、すでに市場の関心はＯＰＥＣが9月24日の総会で減産を決定するかどうかに移っている。イラクの生産回復が遅れ、価格が30ドルを越える状況では、減産は見送られる公算が大きいが、将来の価格下落を回避するために積極的な予防減産が取られる可能性も残されている。市場はＯＰＥＣ総会の行方を巡る思惑に大きく左右されそうだ。

○トピック：原油価格（ＷＴＩ期近）の先行きについて、依然として少数派ではあるものの下落予想が増えてきている。そうした見方の根拠となっているのは、ＩＥＡが発表した2004年の需給見通しである。本稿では、ＩＥＡの予測にはないＯＰＥＣとイラクの生産量について仮定を置いた上で、予想される2004年までの需給バランスを計算してみた。それによると、2003年第4四半期以降、イラクと非ＯＰＥＣ産油国による供給拡大が、世界景気の回復による需要拡大とＯＰＥＣによる供給削減を上回り、需給バランスが供給過剰の状態となる見通しである。こうした見通しに立てば、価格が先行き下落するとの見方にも説得力がある。

原油レポート No.13 需給バランスは先行きの価格下落を示唆

お問い合わせはこちら

テーマ・タグから見つける

テーマ

タグ