○足元の価格動向:イラクのパイプライン爆破や米国のガソリン需給逼迫などに影響されて投機マネーが流入し、原油価格(WTI期近)は一時32ドル台まで上昇した。しかし、投機筋のポジション解消にともなって9月2日に29.41ドル(前日比－2.16ドル)まで下落し、その後も投機筋の売り圧力が続いていることから横ばいないしやや弱含みで推移している。

○市場参加者別のポジション:投機筋はイラクの治安悪化やガソリン需給の逼迫を材料に買い建玉を増やし、価格を一時32ドル台まで押し上げた。その後、利益確定のためポジションを解消し、足元では売り持ちに転じている。

○需給動向:原油在庫は増加と減少を繰り返しながら、需給逼迫の目安とされる2億8千万バレル前後で推移している。また、需要の増加を受けてガソリン在庫の減少が続く一方、冬場に需要期を迎える中間留分在庫は前年水準並まで積み上がってきた。

○OPECの生産動向:6月以降、OPECは生産枠をよく守っている。現状では需給バランスが維持されており、価格もプライスバンドの範囲内にあることから、OPEC関係者は9月24日の総会では生産枠変更の必要はないとしている。

○トピック:世界第1位と第2位の産油国であるサウジアラビアとロシアが生産調整と原油価格の安定のために協力を強化していくことで合意した。しかし、原油価格が高水準で推移しているうちは両国が協力を強化する必要性は小さく、実際に減産合意が得られ、さらにそれが順守されるかは疑わしい。OPECとロシア(非OPEC産油国)の協調減産がなかなか機能しない理由として、国家収入のほとんどを石油輸出に依存するOPECの財政構造がある。OPECは生産コストが低いものの、ロシア(非OPEC産油国)と比べると国家財政が石油輸出収入に依存する比率が高く、原油価格下落の影響が大きく出てしまう。ロシア(非OPEC産油国)が15～20ドルでも採算が取れると言われているのに対して、OPECはそのレベルでは税収不足に陥ってしまう。そのため、価格が15ドルを下回ってこない限り、OPECとロシアの協調減産が機能する可能性は低いと言えるだろう。

原油レポート No.14 協調減産を妨げる財政構造の違い

お問い合わせはこちら

テーマ・タグから見つける

テーマ

タグ