○足元の価格動向：原油価格は冬の需要期を前に中間留分在庫や米北東部の気温といったデータに敏感に反応している。9月下旬から10月上旬にかけては米北東部の気温が平年を下回ったことが価格押し上げ要因となり、反対に10月中旬から足元にかけては気温が平年を上回ったことが価格押し下げ要因となった。ただ、足元では中間留分在庫が減少したことを受けて30ドル台に反発している。

○投機筋のポジション：価格を大きく動かすニュースがなく、12月4日のＯＰＥＣ総会までは様子見の雰囲気が強い。足元では米北東部の気温上昇を受けて、冬の需給逼迫懸念が後退し、純売りポジションに転じている。

○需給動向：原油在庫は輸入拡大を背景に徐々に増加しているものの、前年比の伸びは鈍化してきており、依然として原油には需給逼迫感が強い。ただ、これから本格的な需要期を迎える中間留分（暖房油を含む）の在庫は前年水準を10％近く上回っており、気温が平年並みであれば暖房油の需給逼迫は回避される見通し。

○ＯＰＥＣの生産動向：10月のＯＰＥＣ10ヵ国の生産量は2584万b/dと前月比19万b/dの増加となった。11月から実施される減産（90万b/d）を前に加盟国が駆け込み増産を行なった模様である。また、イラクの生産は戦争前の水準の7割強まで回復した。今後は、8月に爆破された北部油田と輸出港のトルコ・ジェイハンを結ぶパイプラインが早ければ11月中にも稼動を再開する見通しであり、イラクの輸出・生産の回復ペースが一段と加速する可能性がある。

○トピック：今の原油市場には三つの価格上振れリスクがある。「冬の気候」と「ＯＰＥＣの減産」と「米国景気の上振れ」リスクである。米商務省によると2003年7-9月期の実質ＧＤＰ成長率は前期比年率＋7.2％と大方の予想を大きく上回った。米国景気の回復自体はすでに織り込み済みであったものの、回復の勢いが想定より強かったことは、それまで弱含み傾向で推移していた原油価格（ＷＴＩ期近）が下げ止まるきっかけの一つとなった。米国景気が想定を上回る勢いで回復し続ければ、原油価格の上振れ要因となるであろう。

原油レポート No.18 三つの価格上振れリスク

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