○足元の価格動向・投機筋のポジション：世界景気の回復が続く中で冬の需要期を迎えたことを背景に在庫が4週連続して大幅減少している。このため、原油価格は、需給逼迫懸念の拡大を背景に今年3月のイラク戦争前の高水準に急上昇している。

○需給動向：原油在庫は4週連続して大幅減少し、足元では前年割れに転じている。ヒーティングオイルを含む中間留分についても在庫積み増しは一服しているが、気候が平年より暖かいこともあって前年を上回っている。ガソリンは来年の需要期に向けて在庫補充の動きが出てきたが、景気回復を背景に需給は引き締まり気味である。

○トピック：2004年の原油価格を予測する上でのポイントを2つ挙げてみた。

「低在庫の罠」から脱出できるか？：1990年代以降、世界石油企業は低在庫を基本とした操業体制を築いてきたが、低在庫戦略は2つの面から価格の上昇要因となる。１つ目は、企業が余分な在庫を持たない結果、需要量が企業の想定を上回って拡大すると、一斉に在庫積み増しに走る可能性がある。2つ目は、先物市場では低在庫が需給逼迫のシグナルとなって価格上昇を誘い、価格上昇が企業の在庫積み増しを控えさせるため、低在庫⇒価格上昇⇒低在庫⇒価格上昇・・・の悪循環に陥る可能性がある。
ＯＰＥＣは減産に合意できるか？：サウジアラビア石油相は『原油の価格と価値の間には相違があり、我々は価値を重視している』と述べ、ドル安への懸念を示した。2002年以降、原油価格が上昇基調を続ける一方で、ドル為替レートは下落基調が続いている。このため、為替変動の影響を除いた購買力ベースの原油価格は実際の原油価格より下振れしている。高過ぎると指摘される原油価格がドル安にともなう名目価格の上昇に過ぎないとする見方は、今後のＯＰＥＣの生産政策に影響を及ぼす可能性がある。ＯＰＥＣは来年2月10日に臨時総会で減産にこぎつけたい構えだが、現状の高値水準では増産圧力が強く合意は難しい。しかし、ドル安にともなう価値の目減りを理由に、価格上昇局面でも減産が決定される可能性がある。

原油レポート No.21 2004年の原油価格を予測する上での2つのポイント

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