○ＷＴＩは需要好調とＯＰＥＣ減産で再び高騰

米国北東部の気温が平年を下回る日が多く、暖房油在庫が急速に取り崩されている。また、春の需要期前にもかかわらずガソリン在庫が前年を下回って推移している上に、段階的にガソリン品質規制が強化されることもあって製品需給の逼迫感が強まっている。さらに、ＯＰＥＣが2月10日の臨時総会で高価格であるにもかかわらず減産を決定したことで価格先安感の進行に歯止めがかかり、投機資金の流入が続いた。このため、ＷＴＩ原油期近物は36ドル前後まで高騰している。

○ＯＰＥＣ予想外の減産決定で価格先安感に歯止め

ＯＰＥＣは2月10日の臨時総会で高価格でありながら、3月までに超過生産分（1月時点で157b/d）を解消した上で、さらに4月から現行生産枠を100万b/d引き下げることを決めた（2段階減産）。今回の減産が到着ベースで消費国の需給に反映されてくるのは4月になってからだが、市場では価格先安感に一定の歯止めがかかったことから投機資金の流入拡大が続いており、価格を一段と押し上げている。ただし、ナイジェイリアやアルジェリアなど外資導入で急速に生産能力を拡大している北アフリカの中小加盟国は増産意欲が強く、実際には生産量があまり減らない可能性がある。中小産油国の増産に歯止めがからず、合意通りに減産が実行されなければ、かえって投機筋の売りを誘う可能性もある。

○今回のトピック：米戦略備蓄放出の条件

2001年9月の同時多発テロ事件以降、米国は供給途絶や価格高騰などの緊急時に備えた原油備蓄（戦略備蓄）を強化している。最近、戦略備蓄が大量に放出されたのは2000年の価格高騰時であるが、当時、クリントン政権は放出決定に際して原油在庫減少に民間の不安が高まっているとして政治的な意図を否定したが、大統領選挙前ということもあって憶測を呼んだ。現在の状況を当時と比べると、低在庫、原油価格の高騰、大統領選挙前と戦略備蓄放出の条件が揃っており、ブッシュ政権が高騰の続く価格を沈静化させるために戦略備蓄放出に踏み切ることがあっても不思議ではない。

原油レポート No.25 米戦略備蓄放出の条件

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