○ＷＴＩはガソリン需給の逼迫懸念拡大を背景に37ドル台に高騰

ＷＴＩ原油（期近）は、2月に入って騰勢を強め、昨年3月のイラク戦争前の高値水準である37ドル台に高騰している。背景には、米国はじめ世界景気が着実な回復ぶりを示し、景気の先行きに対する楽観的な見方が広まっていることがある。また、春の需要期前にもかかわらずガソリンの在庫が前年より少ない上に、4月から品質規制が強化されるとあって、需給逼迫懸念が台頭している。このため、需要のピークを過ぎたヒーティングオイルの価格が下落しているのとは対照的にガソリン価格が高騰しており、原油価格の新たな押し上げ要因となっている。

○ＯＰＥＣの想定をも上回る高値に対し増産報道も

減産の影響が現れ始める2月の生産量をみると、1月と比べて生産量が減少しているのはサウジアラビア、ベネズエラ、クゥエート、インドネシア、の４カ国だけで、減産幅も小幅である。ＯＰＥＣは第2四半期の需要縮小による価格崩壊に危機感を持っていたが、現状は高成長の続く中国はじめ世界景気の回復力が強まっており、想定以上に需要が拡大している。価格もＯＰＥＣの減産決定を境に再び騰勢を強めており、「今後2週間価格が高止まりすれば電話協議で増産を検討する」との報道もある。

○今回のトピック：2000年にもガソリン市場の逼迫が原油高をもたらした

冬の需要期を過ぎて需給が緩んできているにもかかわらず、原油価格が高騰している一因には、予想外のガソリン需給逼迫がある。需要が堅調なこともあって低公害の改質ガソリンが前年水準を大幅に下回っている上に、行楽シーズンで消費量の増える第2四半期から品質規制が強化されるため、新基準品の生産が追いつかないとの思惑が広がっている。過去を振り返ると、ＯＰＥＣの計3回の増産で供給過剰の状態にあった2000年にも、品質規制強化によるガソリン市場の逼迫に影響されて原油価格が高騰したことがあった。今後、段階的に実施される品質規制強化により、製油所の生産が需要に追いつかなければ、改質ガソリンの需給逼迫度合いが一段と拡大して、原油価格を当面高止まりさせる可能性がある。

原油レポート No.26 2000年にもガソリン市場の逼迫が原油高をもたらした

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