○ＷＴＩ、40ドル目前に迫る

ＷＴＩ原油（期近物）は、5月5日に39.57ドルに跳ね上がり、1990年10月11日に付けた最高値である40.4ドルに迫っている。価格高騰の背景には、イラクだけでなくサウジアラビアでも大規模テロ事件が起き、供給不安が高まっていることや、米国市場において、ガソリン価格が急上昇していることがある。

○ＯＰＥＣは小幅だが減産実施

ＯＰＥＣの4月の原油生産量は2,585万b/dと3月に比べて22万b/d減少し、予定していた4月からの減産を小幅ながら実施したようである。ただ、ＯＰＥＣ加盟国内では40ドル目前に迫る価格高騰に対して世界経済の腰折れを懸念する声も高まっており、5月22～24日にオランダで開かれる産油国・消費国対話（エネルギー・フォーラム）の場で、生産枠引き上げ（増産）を検討する可能性を示唆している。

○今回のトピック：原油高が世界経済に与える影響

原油価格がついに40ドル目前に迫り、ＩＥＡのマンディル事務局長が『石油危機の再来もありうる』と警鐘を鳴らすなかで、原油高が世界経済に及ぼすマイナス効果への懸念が高まっている。ＩＥＡは5月4日に発表した『原油高が世界経済に及ぼす影響についての分析』において、原油価格の上昇が経済成長率に及ぼすマイナス効果は、日本で0.4％、米国で0.3％、ＥＵで0.5％に達するとしている。また、原油価格が3年前に比べて10ドル高い35ドルの高値水準が続いた場合、世界経済の成長率は0.5％落ち込み、2550億ドル（約28兆円）の所得損失が生じると分析している。40ドル目前に迫る原油価格は、直ちに世界経済を腰折れさせるまではいかないものの、景気回復の足かせになると言える。

原油レポート No.30 原油高が世界経済に与える影響

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