○ＷＴＩ、40ドル超が続く

ＷＴＩ原油価格（期近物）は、5月11日に40.06ドルと1990年10月以来の40ドル台に達し、5月17日には41.55ドルにまで上昇した。価格高騰の背景には、イラク情勢の泥沼化やサウジアラビアでの大規模テロ事件により供給不安心理が高まっていること、米国市場においてガソリン価格が急騰していること、ブッシュ大統領が戦略備蓄放出を否定したことなどがある。なお、足元では投機筋の利食い売りにより40ドル割れとなっているが、夜間市場の動きを見る限りＯＰＥＣの増産決定持ち越しに対する市場の反応は鈍く、来週にＯＰＥＣ臨時総会を控え様子見の雰囲気が強い。

○ＯＰＥＣ増産決定は来週に持ち越し

ＯＰＥＣは40ドルを越える原油価格の高騰による世界経済の腰折れを回避するため、5月22に非公式会合を開いて生産枠引き上げを協議した。しかし、一部の加盟国から増産の効果を疑問視する声が上がり、決定は6月3日にベイルートで開かれるＯＰＥＣ臨時総会に持ち越された。

○今回のトピック：なぜ原油価格は変動が激しいのか

原油の需要は価格弾力性が小さいため、短期的にはわずかな供給ショックが生じただけでも価格が大きく跳ね上がってしまう。現状は、高価格にもかかわらずアジア・中国はじめ世界需要が堅調に推移する中で、イラク、サウジアラビアなどでテロ事件が相次ぎ、供給不安心理が高まっている。供給不安心理は、それが不安で終わればいいが、現実化した場合は価格暴騰を招く可能性がある。先物価格には市場が想定する将来のあらゆるリスクが織り込まれるものだとすれば、イラク情勢の泥沼化が価格をさらに高い水準に押し上げる可能性を考慮しておく必要がある。

原油レポート No.31 なぜ原油価格は変動が激しいのか

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