○ＷＴＩ価格高騰は一服

6月1日に42.33ドルの上場来最高値を更新したＷＴＩ原油価格（期近物）は、翌日にはＯＰＥＣの増産合意観測を受け39.96ドルまで2ドル以上も急落した。そして、6月3日に開かれたＯＰＥＣ臨時総会で増産合意が報じられると、そのまま値を下げ約2ヵ月ぶりの水準となる37ドル台まで下落した。足元では、イラクのバグダッドで起こったテロ事件に加え、イラク南部のパイプラインが攻撃を受け輸出再開が遅れていることを受け38ドル台に戻している。

○今回のトピック：ＯＰＥＣ増産で市況の潮目は変わったか

ＯＰＥＣの増産合意を受けて、一時の価格高騰が収まる兆しを見せている。足元では38ドル台に戻しているが、これまで価格を押し上げていた投機筋は買いポジションを大きく減らすなど、6月3日のＯＰＥＣ総会を挟んで市況の潮目が変わりつつある。ＯＰＥＣは5月時点で2650万b/dの生産を行うなど、すでに8月以降の生産枠をも上回る超過増産体制にある。そのため、6月3日の増産合意は現状を追認するに過ぎない。しかし、これまで高価格にもかかわらず生産枠引き上げを渋ってきたＯＰＥＣが重い腰を上げて価格下落に対する強い意志を示したことで、市場の注目が再び需給に向かい始めたのではないか。
世界の需給バランス（需要－供給）をみると、すでに2003年第4四半期から供給過剰に転じているが、ＯＰＥＣの超過増産の効果もあって、2004年1Ｑには供給超過度合いが一段と拡大している。2004年2Ｑ以降について、イラクの生産量を210万b/d（＝5月の生産量）とし、ＯＰＥＣの生産量を2700万b/d（＝5月の生産量プラス50万b/d）とした場合、供給超過度合いは一段と拡大する見込みである。ＯＰＥＣが生産枠の引き上げに合意する前から世界の需給バランスは原油余りの状態にあり、市場の注目がイラク情勢や米国ガソリン市場から原油の需給に戻りつつある中で、今後は価格下落リスクを意識する展開になる。

原油レポート No.33 ＯＰＥＣ増産で市況の潮目は変わったか

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