原油市況ＷＴＩ原油価格（期近物）は、テロ事件が止まないなど地政学的リスクが残るなか、イラクの石油施設破壊や、ロシアの石油企業ユコスの経営破綻懸念、ナイジェリアのストライキ、米連邦捜査局（ＦＢＩ）による米国内のエネルギー関連施設へのテロ警報、米国での予想外の在庫減少などを受けて買い進まれ、7月20日には約1ヵ月半ぶりとなる42ドル台（取引時間中）に乗せた。7月15日には、ＯＰＥＣがすでに条件付で合意していた8月からの生産枠引き上げを予想より早く正式決定したが、原油価格への影響はあまりなかった。もっとも、足元ではＯＰＥＣが大量供給を行っているため投機筋も一気には買い進めにくく、利食い売りもあって40ドル近辺で推移している。
トピック；なぜガソリン価格が上がると原油価格も上がるのか最近の原油価格の高騰要因の一つとして、ガソリン価格の高騰が挙げられる。確かに、ガソリン価格が上昇すると精製マージンが改善して、製油所が稼働率を上げるため、原油に対する需要が強まって原油価格の押し上げ要因となる。しかし、無鉛ガソリン価格（期近）が大きく上昇した2004年に入ってから、米国の民間原油在庫は1割以上も増えており、米国の原油需給が逼迫していた訳ではない。
では、なぜガソリン価格の上昇が原油価格の押し上げ要因となっているのだろうか。その理由の一つは先物市場にある。ＮＹＭＥＸでは、クラック・スプレッドといって原油コストと石油製品価格の差額である精製マージンが取引されている。このオプションは、無鉛ガソリンと原油のスプレッド（＝価格差）、暖房油と原油のスプレッドの2種類であるが、この取引によって原油と石油製品のスプレッドが開くと裁定を通じて両者のスプレッドは縮小する。先物市場で精製マージンが取引されていることが、原油価格とガソリン価格の相関関係を強めていると考えられる。原油価格が上がるとガソリン価格も上がるのはコスト構造から容易に想像がつくが、ガソリン価格が上がると原油価格も上がるのは先物市場においてＷＴＩ原油とガソリンの精製マージンが取引されていることが影響していると考えられる。

原油レポート No.35 なぜガソリン価格が上がると原油価格も上がるのか

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