原油市況イラクでのテロや戦闘、米国内でのテロ警戒レベルの引き上げ、ロシアの大手石油会社ユコスの経営破綻懸念などを受けて供給不安が高まっている。その上、大量供給を行っているＯＰＥＣの増産余力の縮小が需給逼迫懸念を煽り、世界の原油市況は軒並み最高値を更新している。ニューヨーク商業取引所（ＮＹＭＥＸ）のＷＴＩ原油先物価格（9月渡し）は8月5日に44.41ドルに達した。
トピック；ユコス問題が原油市況に与える影響についてロシア最大の石油会社ユコスの経営破綻への懸念は原油市況を押し上げるのに十分なインパクトがあった。なぜなら2003年のユコスの原油生産量は日量175万バレルに達するなど、リビア、アルジェリア、インドネシア、カタールといったＯＰＥＣ産油国をも上回る産油規模を誇っているからである。
ユコスに経営危機をもたらしたのは、脱税容疑による莫大な追徴課税であり、ユコスは資産売却、あるいは資産没収を余儀なくされている。プーチン大統領が、ユコスの大株主で政敵でもあるホドルコフスキーを潰しにかかったとの見方が一般的であるが、政府による石油業界への支配強化を狙ったものだとの見方もある。

今のところユコスの生産活動は維持されているものの、国によるユコス解体は不可避な状況となっている。仮に、ユコス解体の過程で一時的であれ生産活動が停止に追い込まれれば、供給サイドからの価格押し上げ圧力が一段と強まる可能性が高い。特に、ロシア産原油の輸出先の約8割を占める欧州市場では需給逼迫感が強まるであろう。足元ではブレント原油が急上昇してＷＴＩ原油との価格差（スプレッド）が一時ゼロになるなど、欧州市場はユコスの生産停止を特に強く織り込みつつあるといえる。ただし、そもそもロシアの輸出用パイプラインは輸出需要に対して能力不足である。このため、仮にユコスの生産が停止しても他の石油会社が輸出を増やすだけのことであるという見方もある。

一方、可能性はかなり低いもののユコスが資金を調達し追徴課税を支払うか、あるいは、ユコスの資産が円滑に他の石油企業に売却され、生産活動が継続される見通しが立てば、欧州市場を中心に価格押し上げ圧力は後退するであろう。

原油レポート No.36 ユコス問題が原油市況に与える影響について

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