原油市況イラクの原油輸出が完全に停止したと伝えられたことや、ロシア最大の石油会社ユコスの生産停止への懸念などを受けてWTI原油先物価格は8月19日に48.70ドルに上昇した。しかし、その後は、米チェイニー副大統領が同国の原油輸入が減れば戦略備蓄放出を検討すると発言したことや、完全に停止したと伝えられていたイラクの原油輸出が実際には一部停止にとどまっていたこと、OPEC議長が9月15日の定例総会での生産枠引き上げに前向きな姿勢を示したこと、などから一時42ドル台まで急落した。足元では、8月31日に発表された米週間石油統計で、原油在庫が予想以上に減少したことなどを受けて44ドル前後まで買い戻されている。
トピック;原油先物市場の規模はどのくらいか米国の先物市場で活発に取引されている53の先物商品について、2004年1月～7月までの平均建玉枚数を算出すると、上位3つは金融先物商品で、いずれも金利先物である。実物商品では原油がトップで、全体では第4位である。エネルギー先物商品では、Henry Hub（天然ガス）スワップが6位、天然ガスが10位、ヒーティングオイルが15位、無鉛ガソリンが17位と、取引がかなり活発に行われている。また、WTI原油の建玉枚数に対し、1位のユーロドルの建玉枚数は8倍、2位と3位を合わせた米国債（5年物と10年物）の建玉枚数は3.7倍もある。相対的に規模の大きい金融市場の小さな変動が、相対的に市場規模の小さいWTI原油をはじめとする実物商品市場に大きな影響を及ぼすことがある。最近では、投機資金が債券や株式といった金融市場から実物商品市場にシフトし、商品相場の大きな上昇を招いたとの指摘がなされている。投機対象としての実物商品の存在が高まり、金融市場との結び付きが強まるにつれて、実物商品市場のボラティリティーは大きくなる。投機資金の流入拡大は、市場に流動性を供給するというメリットがある一方で、ファンダメンタルから乖離して、相場が大きく振れやすくなるというデメリットもある。原油をはじめとする実物商品市場の分析には、ファンダメンタル分析に加え、他の金融市場との関係についての分析が欠かせなくなってきている。

原油レポート No.38 原油先物市場の規模はどのくらいか

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