原油市況WTI原油先物価格はイラクの原油輸出の停止や、ロシア最大の石油会社ユコスの生産が停止することへの懸念などから、8月19日には48.70ドル(終値)まで上昇した。しかし、イラクの原油輸出が通常水準に回復すると供給不安も後退し、投機筋の利益確定の売りで8月30日には42ドル台に急落した。
足元では、米国の週次石油統計で原油在庫が減少したことや、大型ハリケーンが米国の石油･天然ガス生産の約4分の1を占めるメキシコ湾に襲来し、石油施設の操業が停止したこと、ユコスが中国向けの原油輸出を削減すると発表したことなどから需給逼迫懸念が再燃し、46ドル台に戻している。OPECは9月15日の定例総会で生産枠を100万b/d引き上げたが、枠を変えても実際の生産量は変わらないため、価格上昇を抑える効果は限定的だった。
トピック;OPECの産油能力とリグカウント大量供給で生産余力が縮小しているOPECは、今後、産油能力の増強に乗り出す方針を明らかにしている。意外なことに、世界の確認埋蔵量の8割を占めるOPECの産油能力のピークは1970年代であり、その後は伸び悩んでいる。その理由は、原油価格の下落とそれにともなう財政赤字の拡大によって油田開発を積極的に進めることができなかったことがある。しかし、原油価格が高水準で定着し、サウジアラビアは1981年以来となる23年ぶりの財政黒字に転じるなど、産油国の財政は急速に好転している。また、高成長を遂げる中国やインドなどアジアで原油需要が急拡大していることも、産油国の投資姿勢を強気にさせている。
米Baker Hughes社が発表している油田の掘削動向を表す「リグカウント」が1980年代以来の高水準にまで増加している。リグカウントとはドリルによる掘削数で、産油能力に先行すると考えられる。OPEC内には現在も生産量が生産枠に届いていないイランやベネズエラなど産油能力の拡大に消極的な加盟国もあるが、世界的な需要拡大と高値定着を背景とした投資拡大によりOPECの産油能力は増加傾向に転じる見込みである。

原油レポート No.39 OPECの産油能力とリグカウント

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