原油市況～最高値更新が続くWTI先物原油は10月1日に終値で50ドルの大台を初めて突破した後も上昇ピッチを緩めず、10月15日には54.93ドルの史上最高値を更新した。しかし、代表的な中東産重質油であるドバイ原油はあまり上昇しておらず、軽質油であるWTI原油とドバイ原油のスプレッドが急拡大している。このことは、最近の原油価格の上昇が「油種」の問題に起因していることを示している。すなわち、冬を前にした北米や欧州で灯油の精製に適した軽質油に対する需要が増加する一方、紛争やゼネストによって軽質油であるナイジェリア産原油の生産･輸出に支障が出ており、軽質油に対する需給逼迫懸念が高まっている。特に、米国ではハリケーン襲来によって被害を受けた石油施設の復旧が遅れていることもあってヒーティングオイルの在庫が低水準にとどまっており、冬場の暖房供給に懸念が高まっている。軽質油の供給には制約があることから、短期的には価格がさらに上昇する可能性がある。
トピック～原油の性状と価格の関係WTI先物原油の価格が9月からおよそ1ヵ月半で30.1%も上昇したのに対し、ドバイ原油の価格はわずか6.2%しか上昇しておらず、性状の違いによる原油間の価格の差が大きくなっている。
原油の性状を分類する方法には、(1)API比重による重質･中質･軽質各原油への分類、(2)硫黄分の含有量による高硫黄、低硫黄各原油への分類、などがある。WTI原油はAPI比重が40.8、硫黄含有率が0.34%であるから軽質低硫黄油に、ドバイ原油はAPI比重が31.1、硫黄含有率が2.00%であるから重質にかなり近い中質高硫黄油に分類される。そして、原油の性状と価格の間には、一般的には軽質であるほど、あるいは、低硫黄であるほど価格が高いという関係がある。これは、軽質油が灯油や軽油など付加価値の高い製品の精製に適しており、また、低硫黄油は環境規制の厳しい先進国で需要が強い高品質ガソリンの精製に適しているためである。ただし、原油の価格にはAPI比重や硫黄含有率の他にも、産出地や、イールド(原油から生産される製品･半製品の割合)、取引港の利便性なども反映されるため、異なる原油の価格の差を分析するには、さらに詳細な検討が必要である。

原油レポート No.41 原油の性状と価格の関係

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