原油市況～最高値更新、当面は60ドルを試す展開にWTI原油価格(期近)は、世界景気の拡大傾向が続いていることから、春以降のドライブシーズンに対する需給逼迫感が強まり、2004年10月下旬に付けた上場来最高値(終値ベース)を更新して56ドル台に上昇している。2月末から北半球を襲っていた寒波の勢いは弱まっており、また、3月16日にはOPECが増産を決定したが、価格上昇の勢いは衰えていない。
トピック～ OPECの能力不足問題OPECは3月16日の定例総会で即日50万b/dの増産を決定し、次回総会までにもう50万b/dの追加増産も決めた。しかし、市況はOPECの増産決定にもかかわらず、その後も上場来最高値を更新し、OPECに価格上昇を止める力がないことを示した。OPECの増産決定が価格上昇に対して歯止めをかけられなかった理由としては、(1)OPECの増産分(主にサウジアラビア産原油)がガソリン精製に適していない重質であること、(2)OPECの増産決定は小幅な上に、現状追認に過ぎないこと、(3)OPECの増産決定は生産余力を低下させ、供給リスクを高めること、などが挙げられる。
世界の産油国の中で生産余力があるのはOPECだけであり、OPECの生産余力の低下は、将来の需給逼迫を予想させ、中期的な価格トレンドを押し上げる可能性がある。OPECの生産能力は、投資不足によって1970年代に付けたピークの約8割しかなく、長期停滞が続いている。OPECも生産能力不足の問題は認識しているが、あまり大きな生産余力を持つと、将来の需給緩和を予想させ、中期的な価格トレンドを押し下げる可能性があることや、埋蔵量という制約があることなどから、OPECの生産能力が1970年代の水準まで回復することは期待しづらい。中期的な価格動向を予測する上で、OPECの生産能力と生産余力に注意が必要である。

原油レポート No.51 ＯＰＥＣの能力不足問題

お問い合わせはこちら

テーマ・タグから見つける

テーマ

タグ