１．原油市況～ 50ドル台に反落、もう一段の調整もあり得る

ＷＴＩ原油価格（期近）は、世界的に燃料需要の拡大傾向が続いていることや、3月下旬にかけて北米が寒冷な気象となり暖房需要が増加したことなどから、石油製品需給が逼迫して4月初めに57ドル台（終値ベース）まで高騰した。

その後、ＯＰＥＣが追加増産に積極的な姿勢を示したことに加えて、米国エネルギー省の在庫統計で原油在庫が9週連続して増加し、石油製品在庫も増加したことから、投機筋の利益確定の売りも出て50ドル台に反落している。また、国際エネルギー機関（ＩＥＡ）が4月の月報で、世界的な金利上昇傾向や原油価格の上昇による需要抑制、特に中国の需要増の一服などを考慮し、2005年の原油需要見通しを4ヵ月ぶりに下方修正したことも市場心理を冷やし、価格を押し下げたと見られる。

２．トピック～ 2005年夏も米国ガソリン市場では需給逼迫の見込み

当面の原油市場で関心の高いトピックとしては、需要期（4月～9月）を迎えた米国のガソリン市場の動向が挙げられる。米国エネルギー省の予想によると、需要期のガソリン消費量は、自動車の燃料効率が改善していない上に、自動車台数の増加と１台当たり走行距離の増加によって、好調だった2004年実績を1.8％上回ると見込んでいる。一方、ガソリンの生産量は製油所の精製能力不足によって前年比＋0.5％の増加にとどまると予想し、生産量が消費量に追いつかないとしている。

そもそも、米国製油所は、増え続ける石油消費に対して投資が追いつかず、恒常的な精製能力不足に陥っている。このため、製油所は90％台のフル稼働を続けており、生産余力が乏しいため、予期しない需要増や生産障害などに直面すると、需給が混乱して、製品価格の高騰につながりやすい。特に、ガソリンは生産量と消費量のギャップを輸入で賄おうとしても、今や米国の厳しい環境規制をクリアできる製品の供給先は限られており、また、州ごとに規制が異なるため州間での製品の融通が効きづらい。予期しない需要増や製油所の事故、地域間の需給ミスマッチなどが生じれば、ガソリン価格が高騰し、原油価格を一段と押し上げる可能性もある。

原油レポート No.53 2005年夏も米国ガソリン市場では需給逼迫の見込み

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