１．原油市況～景気減速懸念から50ドル割れ

ＷＴＩ原油価格（期近）は、世界景気の回復傾向が続いていることや、ドライブ・シーズン（4月～9月）を控えてガソリン需給の逼迫懸念が強まったことなどを背景に投機筋の買いが集まり、4月初めに一時58ドル台をつけ60ドルの大台に迫った。

しかし、米国で原油在庫が予想を上回って増加し、石油製品在庫も増加したこと、石油輸出国機構（ＯＰＥＣ）が生産枠を拡大する方針を表明したことなどを受けて投機筋の手じまいに向けた売りが優勢となり、4月中旬には50ドル台まで反落した。その後、米製油所の事故を受けてドライブ・シーズンを迎えたガソリンの需給逼迫懸念が再び強まり、55ドル台まで戻したが、足元では2005年1-3月期の米国ＧＤＰ成長率（前期比年率＋3.1％）が市場予想を下回ったことから景気減速懸念が強まり、50ドル前後まで下落している。

２．トピック～投機は価格変動を激しくしているのか

最近、原油価格は一日で2ドル～3ドル、日によっては4ドル近くも変動する日がしばしばあり、価格変動が激しい。実際に、ＷＴＩ原油価格（期近）の日次ベースの価格変動幅は長期的な拡大傾向をたどっている上に、特に足元では急伸している。価格変動幅が拡大している理由としては、他の金融市場と同様に原油先物市場でも投機筋の影響が大きくなっていることが挙げられている。短期的な利ざや稼ぎが目的である投機筋は売買を頻繁に繰り返し、また、少しでも高いリターンが得られる兆候があれば瞬時に異なる市場に巨額の資金を移動させるため、価格変動を増幅させ、時には市場を不安定にしてしまうこともある。実際、1998年までは価格変動幅だけでなく、価格変動率で見ても上昇傾向にあり、値動きが激しかったと言える。

しかし、日次ベースの価格変動率は、1999年以降は緩やかな低下傾向をたどっている。確かに、価格変動幅は拡大しているが、これはもっぱら価格自体の上昇にともなうものと言える。99年頃から投機資金の流入が拡大しているが、価格変動率の動きをみる限り、投機資金の流入拡大が相場の変動を激しくしているとは言えない。

原油レポート No.54 投機は価格変動を激しくしているのか

お問い合わせはこちら

テーマ・タグから見つける

テーマ

タグ