１．原油市況～米ＧＤＰ上方修正と原油在庫の増加一服で反騰

ＷＴＩ原油価格（期近）は、景気減速懸念や米国の原油在庫積み上がりなどから5月下旬にかけて46ドル台に下落した。その後、市況急落を受けてＯＰＥＣ首脳が減産を示唆する発言をしたことや、2005年1-3月期の米国ＧＤＰ成長率が上方修正（前期比年率＋3.1％→ ＋3.5％）され、米国景気の減速懸念がひとまず後退したこと、米国の原油在庫が減少したことなどを受けて50ドル台に戻した。

足元では、6月2日に発表された週次石油統計で原油、石油製品とも在庫が増加したものの、中間溜分（暖房油や軽油）の市況が季節外れにもかかわらず上昇していることなどを受けて買いが優勢となり、55ドル台まで上昇している。

２．トピック～米国在庫統計から読む原油価格の先行き

現在、原油市場には目新しい取引材料がなく、需給指標である米国在庫統計に関心が集まっている。そこで、米国在庫統計から原油価格の先行きについて考えてみた。まず、原油在庫は、供給が高水準を続けるものの、ドライブシーズンが過ぎて製油所が定期改修に入る9月までは精製投入の拡大が続く見込みであることから、今後は減少していく公算が大きい。

次に、ガソリン在庫は、平均的な季節パターンに従えば、ドライブシーズンがピークを過ぎる10月にかけて取り崩されていく公算が大きい。一方、中間溜分在庫は冬の暖房シーズンを前に積み増されていく公算が大きいが、足元の在庫水準が過去5年間で最低レベルにあり、需給逼迫懸念が強い。

在庫の動きから原油価格の先行きを読むと、9月までは原油とガソリン在庫とも減少が見込まれ、価格を下支えする。一方、中間溜分在庫は増加が見込まれるが、需給逼迫懸念が強く、価格押し上げ要因となっている。このため、ＷＴＩ原油価格は在庫面（需給面）からの下げ材料に乏しく、当面は50ドル台で高止まりする可能性が高い。原油価格の先行きについては、原油、ガソリン、中間溜分の3つの動きにバランスよく目を配ることが重要であり、3つのうちいずれか一つでも通常想定されるサイクルから逸脱してくると、価格が大きく変動する要因となる。

原油レポート No.56 米国在庫統計から読む原油価格の先行き

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