１．原油市況～第４四半期に向けての需給逼迫懸念から上昇

ＷＴＩ原油価格（期近）は再び上昇している。8日発表の米週次統計で燃料在庫が増加したことから一時的に弱含む局面もあったものの、その後は冬場に向けての需給逼迫懸念などを背景に上昇に転じた。15日の米週次統計でも在庫が予想以上に減少し、17日には最高値を更新した。なお、15日にはＯＰＥＣ総会が開催され、7月から生産枠を2800万ｂ/ｄへ拡大し、原油価格が下落しない場合にさらに50万ｂ/ｄを追加増産する権限を議長に与えることで合意したが、相場は反応薄であった。

２．トピック～タンカーレートから見た原油相場

タンカーレート（運賃）は、原油の需給を反映すると考えられ、原油相場の分析に有益な情報となる。実際、タンカーレートと原油相場はおおむね連動してきた。ガルフ向けとシンガポール向けとの原油タンカー運賃を比べると、相対的にシンガポール向けのタンカー需要が底堅く、ドバイ原油がＷＴＩ原油に比べて一段と大幅に上昇していることと符合している。荷動きの先行指標である原油タンカーの用船契約量（トン数）を見ても、ガルフ向けの用船契約量は落ち込んでいるが、主に東アジア向け（Far East）の用船契約量は高水準を維持している。足元では、欧米先進国で原油調達が一服する一方で、中国・アジアの旺盛な原油調達意欲が世界の原油価格の上昇をけん引していると言えそうである。

しかし、世界全体で見れば原油の荷動きは鈍化しており、原油タンカーの運賃が弱含んでいる。足元ではタンカーレートが2004年11月をピークに急落する一方、原油相場は高止まりしており、両者の乖離が大きくなっている。これは原油在庫積み上がりやＯＰＥＣの増産一服などを受けて、消費国の原油輸入が減速しているため、原油タンカー市場の需給が緩んでいる可能性を示唆している。

足元の原油価格は、第4四半期の季節的な需要期入りや、ＯＰＥＣの生産余力縮小、中国・アジアの需要拡大などを背景に、将来に対する需給逼迫懸念が価格を高水準に押し上げているが、タンカーレートから見ると相場に調整が生じる可能性があると言えよう。

原油レポート No.57 タンカーレートから見た原油相場

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