１．原油市況～上昇一服後も、高止まり

ＷＴＩ原油価格（期近）は、27日に60.54ドルと終値ベースで初めて60ドル台に乗せた。21日発表の米週次統計では原油在庫は増加したものの、中間留分（暖房油やディーゼル油など）向けの需要が前年比6.9％増となり、第4四半期に向けての需給逼迫懸念を強める内容であった。28日の米週次統計ではガソリン、暖房油、ディーゼル油の在庫が予想以上に増加したため、騰勢は一服し30日には56ドル台に低下したが、7月1日には米ＩＳＭ指数が上昇して景気加速による需要増との観測も出て58.75ドルに戻している。

２．トピック～先物カーブの変化が示唆すること

現在の原油先物市場（7月1日現在）では、8月物が58.75ドルなのに対して、12月物から2月物は61ドル以上になっている。期近物の価格よりも期先の価格が高く値付けされている状態は、相場用語で「コンタンゴ」と呼ばれる。しかし、原油先物市場は2004年10月までは、期先物ほど価格が安くなる「バック・ワーディング」といわれる状態が定着していた。原油先物市場がバック・ワーディングであった理由は、継続的な供給力の過剰や長期的な価格下降トレンドがあったとみられる。

それでも原油先物がコンタンゴの状態になったことが過去にもあった。コンタンゴの状態を「６ヶ月物－期近物の価格差」で測ると、この価格差とＷＴＩの価格は、おおむね逆相関してきている。つまり、足元のＷＴＩ価格が上昇すれば先安感が強まり、足元の価格が下落すれば先高感が強まるといった具合に、足元の急な価格変動とは逆の動きが先行き起こってくるということを期待していたといえる。さらに言い換えると、一方向に相場が動かないような思惑が生じていたといえる。

しかし、現在は、足元の原油価格が上昇し、期先物については、さらに先高感がでているという状況になっている。米在庫統計など短期的な要因に反応して原油価格の水準が変わっても、先物カーブの形状はあまり変わっていない。

市場は中長期的な原油の需給タイト化を懸念し始めており、原油の商品性は、従来の潤沢な商品から稀少な商品にシフトしてきているのではないか。

原油レポート No.58 先物カーブの変化が示唆すること

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