１．原油市況～製油所火災を受けて供給懸念強まり上昇

WTI原油価格(期近、終値ベース)は、7月20日発表の米週次統計では、ハリケーン･デニスの通過により精製がストップしたにもかかわらず、製品在庫がほとんど減っていなかったため、価格は56.72ドルまで下落した。しかしその後は、29日には全米3位の製油所で火災が発生したこと、8月1日には国王の死去により今後のサウジアラビア政治情勢が懸念されたこと、その後も事故や停電による製油所の操業停止が相次いだことから、原油相場は上昇した。10日発表の米週次統計では、ガソリン在庫が大幅に減少し、ガソリンの需給逼迫が懸念されたことも原油高に繋がった。8月12日のWTIは終値で66.86ドルと過去最高を更新した。

２．トピック～米国の製油所事故の影響

世界各地の石油関連施設が事故や災害の影響により、操業停止に陥るニュースが相次ぎ、原油相場が高騰する一因となっている。今回は、米国の製油能力と製油所事故の規模を勘案しつつ、製油所事故のインパクトの大きさについて考えてみたい。

米国には、現在148箇所に製油所があり、その製油能力は日量1712.5万バレルである(2005年1月時点)。足元の製油所の操業停止が米国の石油製品供給にどの程度の影響を与えているのであろうか。各種報道等を基に推計すると、8月5日に終わる週においては、米国の製油能力の4%が停止していたと考えられ、8月12日に終わる週にはさらにその影響が拡大すると見込まれる。

しかし、操業停止の影響が大きかった8月5日の週に、米国全体の製油所の稼働率が大幅に落ち込んだかというとそうではない。これは他の製油所の稼働率を上げることにより必要な供給はおおむね満たされていることを示唆している。

操業停止の影響がさらに拡大する8月12日の週は、全米の製油所稼働率がやや低下するかもしれないが、週内に復旧のメドがつくとされる製油所が多く、8月19日の週以降は操業停止の影響は小さくなっていくと思われる。

また、平年のケースでは、今後、冬場にかけて稼働率が低下していく時期になってくる。仮に事故などによりある製油所の操業が停止しても、他の製油所の稼働率を上げることで対応しやすくなると考えられる。

原油レポート No.61 米国の製油所事故の影響

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